Research Abstract |
障害者基本法(1993)が成立して以来,身体障害・知的障害・精神障害は援助の一本化が図られてきた.なかでも地域生活支援は今日の重要な課題となっている.我々はこれまで,地域生活を送る身体障害者の実態とその障害受容についての研究を進めてきた.本年度からはさらなる発展として,精神障害者に対しても同様の研究を行っている(研究1,2).また併せて,研究対象者から得られた知見の還元の仕方と,対象者-研究者関係について考察を行った(研究3). 研究1:精神障害者の生活機能と障害について明らかにするために,自記式調査票を作成した.この調査票は,「個人属性」,「生活状況」,「心身の状態」,「活動」,「社会参加」,「健康サービス」,「生活満足度」からなる.調査票の特徴は,(1)国際生活機能分類(ICF)を元にした構成になっていること,および,(2)経時的視覚アナログ尺度(VAST)による,障害の時間的経過の把握が可能であること,の2点である.心身の状態の項目については,通常医師が症状把握に用いるBPRSをもとに,患者の自己診断尺度を作成した.また,協力施設のリストアップを行った. 研究2:精神障害者の障害受容について明らかにするため,質的研究法の1つであるLong Interview法を用いることとした。本年度は,インタビューで用いるインタビューガイドを作成した.これは,身体障害者調査で用いたインタビューガイドに対応したものとなっている. 研究3:身体障害者を対象としたこれまでの調査結果や,対象者の調査協力動機について再検討し,得られた知見の還元手段等について考察した.還元手段は,書籍としての出版とした.還元先を調査対象者にとどめず,「障害に関心のある者」とすることで,これまでの研究は,調査対象となった障害者からの情報発信のインターフェースとして位置づけられた.
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