2003 Fiscal Year Annual Research Report
急性パラコート中毒による肺線維化の機構とその進展阻止治療薬の探求的研究
Project/Area Number |
15590571
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
清水 惠子 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (90312462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅利 優 旭川医科大学, 医学部, 助手 (40360979)
塩野 寛 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20112451)
松原 和夫 旭川医科大学, 医学部, 教授 (20127533)
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Keywords | パラコート / 肺障害 / 腎障害 / ドパミン系 / 酸化的ストレス / 抗酸化作用 / ACE阻害作用 |
Research Abstract |
パラコート(PQ)の急性毒性は肺及び腎障害を起こし、慢性毒性は中枢神経障害を生じることが知られている。我々はこれまで、PQの低濃度慢性暴露と神経変性疾患発症との関連性を示唆してきた。PQは、まず血液脳関門を中性アミノ酸トランスポーターを介して通過し、更にドパミントランスポーター(DAT)をによってドパミン神経に取り込まれ細胞毒性を惹起する。PQの中枢神経毒性は興奮性毒性であり、その細胞死はドパミンD3受容体作動薬が有効に抑制した。一方、末梢におけるドパミン受容体存在部位は、肺と腎臓のみであり、PQによる障害部位と一致する。そこで、本研究は、PQの急性末梢毒性におけるドパミン系関与の検討を目的とした。C57BLマウスに、PQの皮下投与20分前に各薬物を腹腔内へ前投与した。PQ(LD100量に相当)投与後、1、3及び6時間後に各薬剤を腹腔内投与した。各薬剤は引き続いて1日2回を2日間、更に1日1回を1日間投与し、生存率を比較検討した。PQ単独投与群には生理食塩水を同じ回数腹腔内投与した。DAT阻害薬であるGBR-12909,Nomifensine、ドパミンD2受容体拮抗薬(haloperidol)、ドパミンD1/2受容体拮抗薬(chlorpromazine)は急性中毒に対する生存率向上に関与しなかった。中枢毒性を抑制したドパミンD3受容体作動薬(cabergoline)では有意に生存率を向上させることができなかった。従って、PQの急性末梢毒性発現機構は、その中枢毒性発現機構と異なる可能性が示唆された。一方従来より、PQの急性末梢毒性には、酸化的ストレスの関与が強く示唆されている。そこで上記と同様の方法にて、各種抗酸化剤(vitamin C及びvitamin E、captopril、enalapril)を投与し生存率を比較検討した。Captopril投与はPQ急性毒性に対して、顕著に生存率を向上させた。この作用は、captoprilの抗酸化作用よりACE阻害作用によると考えられた。また、単独では有意な作用を示さなかったcbergolineもcaptoprilとの併用で、更に生存率を改善した。今後は、これらの作用機序に関して研究を行っていく予定である。
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