2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの加齢変化に着目した年齢推定の試み
Project/Area Number |
15590574
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
針原 伸二 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40198932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田久保 海誉 東京都老人総合研究所, 高齢者の臓器と組織研究グループ, リーダー(研究職) (00154956)
竹内 二士夫 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (70154979)
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Keywords | mtDNA / 加齢変化 / A3243G / 食道上皮 / 心室心筋 / 大脳後頭葉 / 白質 / 灰白質 |
Research Abstract |
ミトコンドリアDNA(mtDNA)に加齢変化があり、特定部位の塩基置換や欠失の増加として観察されることが報告されていた。本研究の目的は、この現象を年齢推定に応用できないかどうかを、実験的に検証することにある。 まず注目したのは、mtDNA・A3243G(mtDNAの3243番目の塩基がAからGへと置換する現象)の変異の増加で、このレベルはPCRで増幅した断片を制限酵素HaeIIIにて切断し、A3243Gによる小さな断片の比をDNA塩基配列決定装置にて解析した。高齢者の食道上皮と心室心筋におけるA3243G変異率を比較したところ、有意に心室心筋における値が食道上皮における値を上回り、心室心筋においては、加齢とともにこの変異が蓄積されることが示唆された。さらに、さまざまな年齢層における両者の値の比較も試みたところ、食道上皮においては加齢変化がみられない一方で、心室心筋での変異は年齢とともに増加する傾向が明確に見られた。細胞周期の長さや酸化ストレスの強弱などの要因が推測されたが、さらに詳細なデータの検討が必要である。 次いで脳組織についてのmtDNA・A3243Gのレベルを測定した。比較は、大脳左後頭葉の白質と灰白質である。両組織の変異レベルを、男女を合わせて比較しても、有意差は見られなかったが、女性においてのみ、白質におけるA3243Gの平均値は灰白質における変異率の平均よりも有意に高かった。男女での相違は確定的としてよいのかなどは今後、例数を増してさらに検討する必要がある。加齢変化については、白質・灰白質ともに認められなかったが、白質における変異率と脳重量との関連を調べたところ、有意に負の相関傾向を示した。脳重量との負の相関に関しては、アルツハイマー病との関連も考えられ、慎重に検討を加えていきたい。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] F.Takeuchi, S.Harihara, K.Takubo, M.Goto他: "The mitochondrial DNA A3243G mutation in Werner's syndrome."Experimental Journal of Gerontology. 38・3. 339-342 (2003)
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[Publications] H.Nishimukai, K.Nishimura, Y.Fukumori, S.Harihara: "Single nucleotide polymorphisms in the human complement C6 and C7 genes."Legal Medicine. 5supplement. S198-S200 (2003)
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[Publications] 角田健司, 針原伸二, B.Dashnyam, 山口吉嗣他: "モンゴルブリアート族におけるApolopopeotein A4遺伝子(codoc127および347)の多型に関して(Abatract)"日本法医学雑誌. 57・1. 74 (2003)
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[Publications] 針原伸二, 仲村賢一, 田久保海誉, 竹内二士夫: "老化にともなうmtDNA A3243G変異の蓄積と年齢推定への応用の可能性(Abstract)"日本法医学雑誌. 57・1. 75 (2003)
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[Publications] 鶴井郁子, 針原伸二, 中村貴子, 本田克也: "江戸時代の人の脳試料を用いたDNA分析(Proceedings)"DNA多型(東洋書店). Vol.12(発売予定). (2004)