2004 Fiscal Year Annual Research Report
十全大補湯のアトピー性皮膚炎治療における基礎と臨床両面からの解析
Project/Area Number |
15590607
|
Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
荻原 幸夫 名城大学, 薬学部, 教授 (70080166)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能勢 充彦 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 講師 (60228327)
|
Keywords | アトピー性皮膚炎 / 漢方方剤 / 十全大補湯 / ハプテン / 制御性T細胞 |
Research Abstract |
昨年度までに、アトピー性皮膚炎のモデルマウスを用いた検討で、十全大補湯がハプテンの反復塗布による慢性皮膚炎の症状の軽減、またその進展を有意に抑制することを見出した。今年度は、この慢性皮膚炎に対する抑制作用のメカニズムを明らかにすることを目的に検討を行い、十全大補湯が制御性T細胞活性を誘導し、免疫系の「負」の制御を介した作用を示すという、新しい作用機序を見出すことに成功した。すなわち、ハプテンによる感作を行ったマウスに十全大補湯を一日一回経口投与し、6日目に腋窩および鼠頚リンパ節から細胞浮遊液を調製し、ナイーブな同系レシピエントマウスに移入した。その24時間後にハプテン感作を行い、6日後にハプテンによるチャレンジをし、その24、48時間後の耳介腫脹を測定した。その結果、十全大補湯を投与したドナーマウスから細胞を移入したレシピエントマウスでは、対照群のマウスに比較して、有意な耳介腫脹の抑制が観察され、十全大補湯の投与によりregulatory活性が生じていることが明らかとなった。また、このregulatory活性を示す細胞の特定を行うために細胞浮遊液を分画して検討したところ、このregulatory活性はT細胞画分に存在することが明らかとなった。これまでに、ハプテンの経口投与による経口免疫寛容や紫外線照射などにより、CD4+CD25+T細胞やTr-1細胞などによるregulatory活性が生じることが報告されているが、本研究のような医薬品の経口投与によるregulatory活性の誘導は初めての知見である。さらに、このregulatory活性の抗原特異性についても解析したところ、ある程度抗原特異性が広いことが明らかとなり、漢方薬の「体質改善」という特性を解析する上で興味深い結果を得た。また、臨床研究については、名古屋市立大学付属病院でIRB申請中であり、今後の成果が期待される。
|