2003 Fiscal Year Annual Research Report
内因性抗生物質カセリシジンの肝再生における役割-ノックアウトマウスを用いて
Project/Area Number |
15590612
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
大竹 孝明 旭川医科大学, 医学部, 助手 (10359490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高後 裕 旭川医科大学, 医学部, 教授 (10133183)
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Keywords | 内因性抗生物質 / カセリシジン / 肝再生 |
Research Abstract |
脊椎動物の病原微生物に対する生体防御反応は獲得免疫と自然免疫から成り立っている.前者は脊椎動物に特有な系であり,病原体認識を免疫グロブリンやT細胞受容体により行われる.一方,自然免疫系は,昆虫などの下等動物から脊椎動物まで普遍的に存在する系で,感染初期の生体防御に重要な役割を果している.内因性抗菌ペプチドは自然免疫の中心的存在で生体防御の最前線を担っている.Cathelicidinは哺乳類の抗菌ペプチドひとつで,我々は生体内におけるその重要性をマウスの皮膚感染モデル(Nature.414:454-7,2001)またはその発現欠如がアトピー性皮膚炎の二次感染の原因として報告した(N Engl J Med.347:1151-60,2002).このcathelicidinはブタの皮膚創傷モデルにおいてepidermal growth factor receptorのco-factorでもあるproteoglycan型接着分子の発現を介して創傷治癒を促進する作用も持つことが共同研究者から報告されている.Cathelicidinは皮膚創傷時に動員される炎症性細胞中に発現しているだけでなく,表皮中のケラチノサイトにも発現しているinducibleな抗菌ペプチドである(Dorschner RA, et al. J Invest Derm.2000).最近ではブタcathelicidinがマウス心筋梗塞モデルにおいて血管新生を誘導し,心筋の虚血後再灌流傷害を抑制すると報告されている.また,ブタcathelicidinはp47phoxやp130casなどの細胞内シグナル分子のSH3 domainに結合し作用することが報告されているが,我々もブタcathelicidin遺伝子導入によるras形質転換線維芽細胞におけるactin構築や細胞増殖の変化がPI3 kinase p85aに結合することによりPI3 kinase活性が低下して細胞内情報伝達経路が修飾されるためと報告した.(Tanaka K.,Jpn J Cancer Res,2001)近年,肝再生においてKupffer細胞の重要性が指摘されているが,マウスのマクロファージ内にcathelicidinが発現していて,肝再生時の増悪因子でもあるLPSの刺激がToll like receptor(TLR)を介して伝わりcathelicidinの発現を誘導することが確認されている.我々は肝再生時にKupffer細胞および炎症性細胞中のcathelicidinが腸管から門脈系に侵入する細菌に対し防御的作用をするだけでなく,直接的または間接的に肝細胞の増生を誘導すると推測している.
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