2003 Fiscal Year Annual Research Report
肝細胞癌における骨髄由来肝幹細胞の関与と治療への応用
Project/Area Number |
15590661
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石川 博基 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (30346960)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 一彦 長崎大学, 保健管理センター, 助教授 (00264218)
浜崎 圭輔 長崎大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (50333521)
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Keywords | 肝再生 / 骨髄細胞 / 肝細胞癌 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
1999年、Petersenらによりマウスの実験から肝臓の幹細胞が骨髄細胞から分化することが示され、その後ヒトでも骨髄移植のモデルから骨髄細胞が肝細胞に分化することが複数の施設から報告され、この分野での研究に大きなインパクトを与えた。これらの報告から骨髄細胞を肝細胞あるいは肝組織の供給源として利用し、肝不全に対する再生医療へ応用することが検討されつつある。しかし、一方では従来より肝幹細胞は肝細胞癌の起源細胞としての可能性も報告されており、これは肝再生治療への妨げとなる。つまりこの2つの仮説、(1)肝幹細胞が骨髄細胞から由来すること、(2)肝細胞癌が肝幹細胞に由来している可能性があること、を結びつけようとするのが本研究の位置づけである。また同時に我々がこれまで行ってきた遺伝子治療を応用し肝幹細胞を利用し肝癌の治療法にまで踏み込んだものである。具体的にはまず骨髄細胞の肝癌化への関与を調べるためにβ-ガラクトシダーゼ遺伝子導入トランスジェニックマウスの骨髄細胞を致死的放射線量を照射した同系マウスに移植しこのマウスに肝癌化の処置を化学発癌モデルにて行った。その結果マウスの骨髄移植は20匹のすべてのマウスで成功し、マウスの発癌実験により40%のマウスが実験期間に生存し、骨髄移植の有無にかかわらずすべてのマウスで肝臓に発癌が見られた。摘出したマウスの肝臓には散在性に骨髄から分化したと考えられるβ-ガラクトシダーゼ陽性の肝成熟細胞が認められたがその頻度はかなり低かった。β-ガラクトシダーゼ陽性の肝癌(骨髄由来の肝幹細胞から発生したもの)は全く見られなかった。これまで生体内で肝幹細胞のみを選択的にマーキングする技術はなく肝癌が幹細胞から発生するとする説は生体内で証明することは困難だった。今回の我々の検討により肝幹細胞をマーキングすることが可能となり、この細胞は発癌には関与している可能性は少ないことが確かめられた。今後さらに他の発癌モデルで検討し、さらに遺伝子デリバリーとして骨髄幹細胞が使用できないかを検討する。
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