2003 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール性肝障害の肝類洞リモデリングにおけるスフィンゴシン1-リン酸の役割
Project/Area Number |
15590689
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
北村 庸雄 順天堂大学, 医学部, 講師 (20231285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榎本 信行 順天堂大学, 医学部, 助手 (20348973)
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Keywords | アルコール性肝障害 / 肝類洞内皮細胞 / スフィンゴシン1-リン酸 |
Research Abstract |
sphingolipid代謝産物であるsphingosine 1-phosphate(S1P)は、血管内皮細胞の多彩な機能調節因子として知られるが、肝におけるその役割については不明な点が多い。本年度の研究においては、エタノールにより誘導される初代培養肝類洞内皮細胞のアポトーシスに及ぼすS1Pの影響を明らかにする目的で、細胞増殖能および細胞内カルシウム・シグナリングとの関連において検討した。肝類洞内皮細胞の初代培養において、TUNEL法によりアポトーシス誘導を、BrdU labeling indexの算定によりDNA合成能を解析した。細胞内カルシウム動態は画像解析装置に接続した倒立顕微鏡を用いて単一細胞レベルで検討した。その結果、TUNEL法によるアポトーシス陽性細胞率は50mMエタノール添加6時間後に有意に上昇を示し、エタノールの濃度依存性に増加が認められた。しかし、1μM S1Pで細胞を2日間前処置することにより、エタノールで誘導されるアポトーシスは有意に抑制された。一方、エタノール非存在下で、S1P添加は細胞のBrdU labeling indexを増加した。又、エタノール添加により細胞のBrdU labeling indexは低下したがS1Pの前処置により有意に抑制された。細胞内カルシウム・シグナリングの検討では、S1Pで細胞を刺激することで細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が認められた。エタノール添加により誘導される肝類洞内皮細胞のアポトーシスおよびDNA合成能の低下はS1Pの前処置により抑制された。さらにS1Pにより細胞内カルシウムの上昇がみられたことより、S1Pがリセプターを介し細胞外シグナルとして機能しているものと考えられた。以上より、アルコール性肝障害において、S1Pが類洞内皮細胞のアポトーシスを抑制し、増殖能を亢進することで肝類洞リモデリングに寄与している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Enomoto N, Takei Y, Hirose M, Konno A, Shibuya T, Matsuyama S, Suzuki S, Ikejima K, Kitamura T, Sato N.: "Prevention of Ethanol-Induced Liver Injury in Rats by an Agonist of PPAR {gamma}, Pioglitazone."J Pharmacol Exp Ther. 306. 846-854 (2003)