2005 Fiscal Year Annual Research Report
肺Mycobacterium(M.)kansasii症の分子疫学に関する研究
Project/Area Number |
15590837
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Research Institution | NHO Kinki-chuo Chest Medical Center |
Principal Investigator |
鈴木 克洋 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 感染症研究部, 部長 (00206468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
露口 一成 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 感染症診断治療研究室, 室長 (00359308)
岡田 全司 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 臨床研究センター長 (40160684)
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Keywords | M.kansasii / 分子型分け / PFGE / PRA / 複数菌感染 |
Research Abstract |
当院に保存されているMycobacterium. kansasiiの代表的菌株20株を選択し、7H9液体培地100ml中で14日間培養・増殖した後、DNA抽出キットと高速遠心分離器を用いてDNAを抽出・精製した。パルスフィールド電気泳動(PFGE)装置(バイオラッドCHEF DRIII)を用い制限酵素としてVSPIを用いるIinumaらの方法に従いPFGEを上記20株のDNAに複数回適応し、その再現性・識別能と実施の難度・煩雑さを検討した。バンドは約20から30得られ、再現性はよかったが、菌株の異同の判断にやや困難な点があった。そこで制限酵素を変更しバンド数を減少させる試みを検討したところ制限酵素としてSma Iを用いるとバンド数が10-20となり菌株異同の比較が容易になる事が判明した。以後の検討にはこの方法を用いた。また近年世界的に用いられている、HSP65領域をPCRで増幅し制限酵素(HaeIII、BstEII)による断片パターンで、kansasiiをIからVII型に分類するPRA法も通常通りに併用した。また繰り返し配列であるIS1652に対するプローブを用い結核菌に対するRFLPと同様の方法も独自に開発した。しかし同法を保存菌20株に応用したところ、ほとんど全てが同一の型を示したため、以後の検討には使用しなかった。 2002年から2005年までに当院で検出・保存した174株(男性由来131、女性由来43)に改良PFGE法とPRA法を適応して分析した。PRA法では174株中実に170株(97.7%)がI型を示し、他はII型3株とVI型1株のみであった。一般に臨床分離株はI型が多いといわれているが、イタリア、米国などで報告されている90%よりもかなり高い値であった。ついで改良PFGE法を用いさらにデンドログラムで分析したところ、大きく3個のグループ分けが可能であった。159株は同一グループに属し我々はA型と名づけたが、これはIinumaらのM型、ZhangらのDa型、PicardeauらのIa型に相当する臨床分離株の最もポピュラーなタイプと考えられた。A型の株全例はPRA法ではI型を示した。他にB型3株、C型12株であった。この検討の過程で同一患者から複数のPFGEパターンの菌株を検出する(複数菌株感染)例が発見された。 我々の3年間の工夫検討、また世界的な既存の報告を含め考えても、M.kansasiiの分子型分けの解像度はいまだ低いと言わざるを得ない。そのため一見同一のパターンを示す菌株が大多数を占める結果となってしまう。しかし解像度が低いにもかかわらず、今回の検討では同一患者への複数菌感染が発見された。これはM.kansasiiの感染が自然環境から生じていることを強く示唆する所見である。
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Research Products
(7 results)