2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15590861
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
稲城 玲子 東海大学, 総合医学研究所, 助教授 (50232509)
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Keywords | セリンプロテアーゼインヒビター / 腎不全 / セルピノパシー / 蛋白尿 / 足細胞 / 小胞体ストレス / 糸球体障害 / トランスジェニック動物 |
Research Abstract |
我々は、これまでに腎糸球体構成細胞の一つで腎機能の制御や糸球体腎炎の発症進展に深く寄与するメサンギウム細胞の遺伝子発現プロファイル(body mapping)作成し、それらを用いたトランスクリプトーム解析によって腎疾患関連機能遺伝子"メグシン"を単離同定してきた。 メグシンは腎臓特異的な新規セリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)であることから、腎疾患治療薬の標的分子としての可能性を本研究のポストゲノム研究にて検討した。その結果、メグシン高発現マウスは糸球体腎炎(メサンギウム増殖性糸球体腎炎様病変)を、ラットは重篤な蛋白尿を伴う腎不全を発症することが示された。そこでこの病型の違いを検討したところ、マウスでは過剰メグシンがプロテアーゼ活性阻害亢進を引き起こし、メサンギウム基質の拡大、それに伴う糸球体細胞の増加やメサンギウム基質の質的変化が生じるのに対し、ラットではセルピン特有の立体構造による凝集が生じ細胞内蓄積(セルピノパシー)を起こすことが判明した。具体的にメグシン高発現ラットは全身でメグシンを高発現したが、腎臓、膵臓においてのみ多量のperiodic acid Schiff(PAS)陽性沈着物が検出された。電顕及び免疫電顕にてそのPAS沈着物は肥大した粗面小胞体(ER)内に蓄積したメグシンであることが示された。腎臓においてメグシン沈着物は糸球体上皮細胞、遠位尿細管、集合管に局在し、ERストレスマーカー(ORP150,GRP78,GRP94)の発現亢進といったERの形態的、機能的異常を引き起こし、強い腎機能障害(BUN、血清Cre値上昇、蛋白尿)を惹起した。膵臓では膵β細胞や外分泌細胞にメグシン沈着物は認められ、β細胞の消失、低インスリン、高血糖を呈した。 これら本研究の成果によって、我々が作製した初の腎セルピノパシーモデルは、腎疾患における小胞体ストレスという新しい病因論の可能性を提示するものと考えられる。
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Research Products
(10 results)