Research Abstract |
ゲノムレベルでの治療薬物モニタリング(GenomicTDM)及びマイクロアレイによる耐性診断を用いてのテーラーメイド医療の可能性を代表的抗白血病薬Ara-Cにつき検討した。代表的抗白血病剤シタラビンの最終活性型代謝物である白血病細胞DNA内転入薬剤濃度の微量定量法を確立し,臨床的に腫瘍細胞DNA内の治療薬物モニタリングを施行した。シタラビン中等量投与後の2名の白血病患者においてインフォームドコンセントを取得の上,経時的に採血し本定量法によりDNA内濃度を測定した。また血中濃度,腫瘍細胞質内濃度を同時に測定した。患者1では血中シタラビン濃度,細胞内シタラビン濃度,DNA内シタラビン濃度とも緩やかに減衰し,投与終了6時間後に測定限界値を下回った。患者2では血中シタラビン濃度,細胞内シタラビン濃度とも患者1に比べ遷延した。DNA内シタラビン濃度はむしろ経時的に増加した。血中濃度,細胞内質濃度の維持が薬剤のDNA内転入に重要であると考えられた。またDNA合成を停止させる為に必要なシタラビン濃度は患者個々人の白血病細胞で異なる事が示唆され,シタラビン治療の個別化の必要性が示唆された。5つの造血細胞種(骨髄系種,単球系2種,リンパ球系1種)から樹立したAra-C耐性細胞からcDNAマイクロアレイによる遺伝子プロファイルを比較解析し耐性に関与する遺伝子同定を行った。結果,細胞間で認めた有意な共通の発現変化はHSPA8,C19orf2,PSAP, POU4F3,MBC2,LGALS1,CACNA2D3,AKT1の8遺伝子であった。しかしいずれも発現レベルは共通に2倍以上の明らかな変化を示すものはなく,既知の耐性遺伝子であるhENT1,DCK,5NTの発現は各細胞で異なっていた。以上より同様な条件でAra-C耐性化を誘導しても耐性機序は細胞株毎に異なる事が示された。今後個々の症例でAra-Cの耐性機序の違いをcDNAマイクロアレイにより網羅的にスクリーニングし,Ara-Cに対する感受性を予測する事で治療のテーラーメイド化を考慮できると期待される。
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