2004 Fiscal Year Annual Research Report
急性白血病にc-kit遺伝子異常が及ぼす細胞学的臨床病態的意義とその分子標的治療
Project/Area Number |
15591002
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
西井 一浩 三重大学, 医学部, 助手 (50332713)
|
Keywords | t(8;21) / 急性骨髄性白血病 / c-kit / 難治性白血病 / mutation / tyrosine kinase / inhibitor |
Research Abstract |
本研究は急性白血病(AML)におけるreceptor型tyrosine kinaseであるc-kit遺伝子異常と発がんとの関係を検討するとともに、そのinhibitorを用いた新たな分子標的治療の可能性を検討するものである。現在までの検討により予後良好と考えられているt(8;21)AMLのなかに一部の予後不良群が存在しており、その細胞学的特性のひとつとして付加的染色体異常(trismy 4)が重要な予後因子であることを見出し報告した(Nishii et al.Leukemia 2003)。さらに、これらの白血病においてc-kit遺伝子を検索したところ全てのtrisomy 4を持つt(8;21)AMLにおいてcodon 816のpoint mutationを検出し、付加的染色体異常とc-kit mutationの密接な関係をさらに報告した(Lorenzo et al. Leukemia 2003)。これらのmutationを持つ細胞ではc-kitのligandであるstem cell factor非依存性tyrosine kinaseの活性化が見られており、このことががん化の機序に関与している可能性が示唆されている。さらに本年度では検討症例を増やしt(8;21)を持つAML53例、t(8;21)を持たないAML48例についてc-kit遺伝子を検討した。興味深いことにc-kitの遺伝子異常は10例に検出され、それらはすべてcodon 816のpoint mutaionであった。また、異常はすべてt(8;21)AMLに見られた。これらのことはc-kitの遺伝子異常はt(8;21)AMLに特異的な現象であると考えられた。c-kit遺伝子異常をもつt(8;21)AMLはもたないt(8;21)AMLと比べ、初診時白血球数の高値、CD56の高発現、予後不良(5年生存率0%)などの特徴をもっており、t(8;21)AMLとして同一疾患とは言いがたくsubtypeである可能性が示唆され、この難治性白血病に対する治療法の開発が必要であると考えられた(論文投稿中)。mutationを持つc-kit遺伝子をc-kit遺伝子異常を持たない白血病細胞株に遺伝子導入した細胞では恒常的なtyrosine kinase活性が見られるとともにさらなる増殖能の獲得が観察された。このことからこの恒常的な活性を抑制しうる薬剤が治療として有益であることが推測され、現在遺伝子導入された細胞株を用いtyrosine kinase inhibitorの抗腫瘍効果を検討し、新たな分子標的治療の確立を目指している。
|
Research Products
(6 results)