2004 Fiscal Year Annual Research Report
インヒビター保有血友病における抗イディオタイプ抗体誘導機序に関する研究
Project/Area Number |
15591127
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
田中 一郎 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00201616)
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Keywords | 第VIII因子 / インヒビター / 抗イディオタイプ抗体 |
Research Abstract |
目的:前年度の検討で第VIII因子のH鎖を認識するインヒビターとL鎖を認識するインヒビターの間で明らかに第VIII因子活性(FVIII:C)の失活パターンが異なることを示した。今年度はさらに凝固解析装置MDAIIによる最大凝固加速度(|Min2|)の測定も合わせて行うとともに抗第VIII因子モノクローナル抗体(MoAb)を用い、その認識エピトープによる差異を詳細に検討した。 方法:インヒビター(AlloAb)は重鎖A2ドメインを認識する3種と軽鎖C2ドメインを認識する4種を、MoAbは重鎖A1とA2ドメインを認識する抗体各1種と軽鎖C2ドメインを認識する抗体2種を使用した。AlloAbおよびMoAb IgGを第VIII因子欠乏血漿で希釈し、10および20 Bethesda単位(BU)/mlのインヒビターを有する第VIII因子欠乏血漿を作製した。それらを正常血漿と等量混合後1、10、30、60、120分の検体の第VIII因子活性および|Min2|をMDAIIで計測した。 成績:10BU/mlのインヒビターと120分反応後、AlloAb7種中4種で0.4-1.1U/dlのFVIII:Cを検出し、7種中3種で0.128-0.152の|Min2|を認めた。MoAb4種中3種で0.2-5.7U/dlのFVIII:Cを検出し、4種中全てに0.102-0.367の|Min2|を認めた。一方、20BU/mlのインヒビターと120分反応後には、AlloAb7種中1種で0.8U/dlのFVIII:Cを検出し、7種中3種で0.111-0.131の|Min2|を認めた。MoAb4種中2種で0.3-3.2U/dlのFVIII:Cを検出し、4種中1種で0.329の|Min2|を認めた。とくに重鎖A2ドメインを認識するAlloAbでは微量のFVIII:Cが検出される傾向がみられ、MoAbを用いた実験系でも確認された。 考案および結語:高力価のインヒビター存在下でも120分後に微量のFVIII:Cが検出された。とくに重鎖A2ドメインを認識する抗体では20BU/mlの条件下でもFVIII:Cが残存する傾向を示した。これらの知見はインヒビター存在下の第VIII因子定期投与で経験する予防的止血効果との関連性を示唆するものであり、抗イディオタイプ抗体誘導を示す間接的傍証であると思われた。
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Research Products
(3 results)