2003 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスモデル動物を用いた発達期海馬障害の病態解明
Project/Area Number |
15591211
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
綱島 浩一 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (30197743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸田 和久 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40334388)
渡辺 慶一郎 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (10323586)
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Keywords | 海馬 / ストレス / 母仔分離モデル / ビスフェノールA / トランスサイレチン / ラット |
Research Abstract |
本年度はストレスモデルの一つとして、まず母仔分離モデルを用いた検討を行った。母仔分離モデルは幼若期の生育環境が以後のストレス耐性に永続的影響を与えることが知られているモデル動物である。臨床上、幼少期の虐待・無視などはうつ病のリスクを3倍にすることが知られ、また幼少期の親との離別はうつ病、躁うつ病の危険因子であることから、本研究には最適なモデル動物と考えられた。今回我々はF344系統のラットを用いて、「母仔分離(MD)群」として出生二日後から1日おきに5回、1回8時間の分離を行った群、「ハンドリング(H)群」として出生二日後から毎日14回、1回15分の分離を行った群、および対照(C)群との計3群を作成した。それぞれ12週齢で採取した海馬から抽出したRNAを用いてGeneチップによるスクリーニングを施行したところ、トランスサイレチンについて、C群とMD群で発現量が4倍以上異なることが明らかになった。さらに上記サンプルを用いて定量的RT-PCRを施行したところ、ほぼ同一の結果が得られ、In situハイブリダイゼーションにより脈絡叢に限局したTTRmRNA発現が確認された。トランスサイレチン(TTR)についてはこれまで恐怖条件付けにより扁桃体でTTRの発現が亢進することや、うつ病患者の脳脊髄液ではTTRが低下することが知られており、興味深い結果と考えられる。 このほか、胎児期から授乳期にかけて、エストロゲン様作用を有する内分泌攪乱物質であるビスフェノールA(BPA)を投与したところ、オープンフィールド試験でBPA投与群では不安様行動の雌雄差が消失するという結果が得られた。組織学的にはBPA投与群オスの発達期海馬においてエストロゲンα受容体発現の増加を認めるなど、幼年期のBPA曝露が海馬機能および不安・ストレス感受性に影ずることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Nagase T, Ito KI, Kato K, Kaneko K, Kohda K et al.: "Long-term potentiation and long-term depression in hippocampal CAL neurons of mice lacking the IP(3) type 1 receptor."Neuroscience. 117(4). 821-830 (2003)
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[Publications] Kohda K, Kamiya Y, Matsuda S et al.: "Heteromer formation of delta2 glutamate receptors with AMPA or kainate receptors."Mol Brain Res.. 110(1). 27-37 (2003)