2004 Fiscal Year Annual Research Report
死後脳研究で異常が報告されている蛋白を標的とした統合失調症モデルの検討
Project/Area Number |
15591229
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
加藤 邦夫 高知大学, 医学部, 助教授 (70346708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
幸田 和久 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (40334388)
下寺 信次 高知大学, 医学部附属病院, 講師 (20315005)
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Keywords | complexin / 海馬 / シナプス可塑性 / ストレス / 行動学習 / 統合失調症 / 空間学習 / 長期増強 |
Research Abstract |
統合失調症の発病には遺伝的要因と環境要因が関与していると考えられている。統合失調症患者の死後脳研究で発現量の低下がみられるcomplexinIIの遺伝子を欠損させたマウスを製作し、それを遺伝的要因と仮定し、環境要因として母子分離ストレスを与え中枢神経系の機能変化を調べた。中枢神経系の機能の検査には海馬スライス標本が製作され、ACSFのかん流下でCA1領域より集合シナプス電位が電気生理学的に測定された。基礎的シナプス反応、短期可塑性、長期可塑性に対するストレスの影響が調べられ、野生型と遺伝子欠損マウスにおけるストレスの影響が比較された。また水迷路試験による空間認知機能に対する影響も調べられた。野生型マウスにおいてはいずれの試験においてもストレスの影響は見られなかった。一方ストレスを付加された遺伝子欠損マウスでは、短期可塑性であるpost tetanic potentiation(PTP)が減少傾向を示した。PTPは前シナプスよりの神経伝達物質の放出に関連した指標であると考えられているので、comp1exinII遺伝子欠損マウスでは、母子分離ストレスが高頻度刺激によるシナプス伝達物質の放出を抑制することが示された。長期可塑性については長期増強現象と長期抑圧現象が調べられた。ストレスを与えられた遺伝子欠損マウスの長期抑圧現象は野生型と比べて変化が認められなかったが、長期増強現象が有意に低下した。このことはストレスが遺伝子欠損マウスのシナプス可塑性に影響を与えることを示している。また水迷路試験により、野生型と遺伝子欠損マウスにおける母子分離ストレスの影響を調べた。野生型ではストレスの影響は認められなかったが、遺伝子欠損マウスにおいては空間学習の遅延が認められた。以上のことからcomplexinIIは母子分離ストレスの影響を抑制する機能をもつことがわかり、統合失調症モデル動物としての可能性が示された。
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Research Products
(2 results)