2004 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト末梢血リンパ球放射線照射によるフリーラジカル産生・酸化的DNA損傷とその制御
Project/Area Number |
15591281
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Research Institution | KOCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
小川 恭弘 高知大学, 医学部, 助教授 (90152397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 俊博 高知大学, 医学部, 助手 (40153621)
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Keywords | リンパ球 / Tリンパ球 / アポトーシス / リソソーム / 放射線 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
ヒト末梢血リンパ球は、未分化でもなくまた活発な細胞分裂を起こさない細胞であるにもかかわらず、非常に高い放射線感受性を示し、ヒトを含めた哺乳類、脊椎動物の5Gyという全身被曝による骨髄・リンパ球死を規定している重要な細胞である。末梢血Tリンパ球は、5Gy照射直後より細胞内での著明な活性酸素産生を示し、照射6時間後には酸化的DNA損傷を来たし、10時間後にはミトコンドリア膜電位変化を生じ、続いてAnnexin V陽性(初期アポトーシス)、24時間後にはPropidium iodide陽性(後期アポトーシス)となることを、これまでの研究で示してきました。一方、骨肉腫細胞(HS-Os-1)細胞では、30Gyの照射によっても細胞内での活性酸素産生はほとんど認めず、DNAの酸化損傷もわつかであった。このHS-Os-1細胞にはペルオキシダーゼやスーパーオキシドジスムターゼなどの抗酸化酵素が多く存在することから、これらをブロックする目的で0.1mMという低濃度の過酸化水素の存在下に放射線照射を行ったところ10Gyの照射によってもアポトーシスを誘導できることを見出しました。従って、ヒト末梢血Tリンパ球の放射線高感受性は、ペルオキシダーゼを欠くことなど、細胞内の抗酸化作用が弱いことが原因であるものと推定され、5Gyの照射1時間後には、細胞内リソソームの変化を来たしていることを示し、さらに、0.1mMの過酸化水素によってもリンパ球のリソソームは膜の変化〜内容物の放出の所見を呈しました。このことから、抗酸化作用の弱い細胞ではリソソームは放射線照射によって発生したヒドロキシルラジカルの影響を受けやすく、そのために放射線に対して高い感受性を示すものと考えられます。一方、抗酸化作用の強い細胞での放射線抵抗性は、低濃度の過酸化水素による抗酸化酵素のブロックおよびリソソームでのヒドロキシルラジカル産生を応用することにより、克服できるものと考えられました。
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Research Products
(3 results)