2003 Fiscal Year Annual Research Report
移植肝幹細胞生着における血管新生・微小循環構築の意義-血管内皮前駆細胞を中心に
Project/Area Number |
15591324
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐藤 勤 秋田大学, 医学部, 助教授 (90235367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮澤 秀彰 秋田大学, 医学部, 助手 (10323148)
安井 應紀 秋田大学, 医学部, 助手 (40323141)
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Keywords | 肝幹細胞移植 / 血管新生 / 血管内皮前駆細胞 / 低酸素負荷 |
Research Abstract |
移植細胞は分離・移植の過程で比較的長時間低酸素状態におかれ、その悪条件に耐えて始めて生着・増殖する。そのためには新生血管を介した血流すなわち酸素と細胞増殖因子供給が不可欠である。本研究の最終目的は移植肝幹細胞生着における微小循環構築の意義を明らかにすることであるが、本年は、まず肝幹細胞である肝上皮細胞の性質解明と低酸素耐性について、続いて肝上皮細胞移植後の長期生着状況について検討した。 1.Sprague-Dawleyラット肝で70%領域の門脈を結紮し7日後に結紮葉から肝上皮細胞を分離した。免疫染色、ウェスタンブロット法で細胞表面抗原解析を行い、AFP(+),アルブミン(-),サイトケラチン19(+), CD34(+), c-kit(+)であることを見いだした。また、この細胞を無酸素状態に60分間おいた後のviabilityは平均70%であり、対照とした成熟肝細胞の12%よりも有意に高く、肝上皮細胞が低酸素に強い細胞であることが明らかにされた。 2.同様に分離した肝上皮細胞を無アルブミンラットの肝に門脈から移植し、2,4,6,8ヵ月後に免疫染色を行い肝上皮細胞の同定を行った。その結果アルブミン産生細胞の漸増が観察され、肝細胞化した移植細胞の長期生着が確認された。しかし移植細胞は肝全体に散在する傾向があり、細胞集塊を形成している部分は極めて稀であった。 3.肝上皮細胞移植2ヵ月後の肝組織においてCD34、第VIII因子、血管内皮増殖因子免疫染色を行い、移植細胞集塊周辺における内皮前駆細胞と血管新生を観察した。その結果、CD34陽性の内皮前駆細胞と考えられる細胞は移植細胞周辺以外の組織より多くはなかったが、血管内皮細胞自体は移植細胞周辺組織に多く認められた。従って肝上皮細胞生着における血管新生の意義が示唆された。 【今後の方向性】肝上皮細胞移植後の長期生着は確認されたが、細胞集塊形成が少ないため、血管新生に関する十分な観察ができなかった。これはS-Dラットの細胞を、免疫抑制剤を投与せずに無アルブミンラットに移植したことも一因と考えられるため、免疫抑制剤を投与する長期観察実験を考慮中である。また、肝上皮細胞の低酸素耐性は興味深い結果であり、そのメカニズムに迫る研究を構築することも考慮中である。
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