Research Abstract |
【背景および目的】FR167653は炎症性サイトカインであるtumor necrosis factor-α(TNRα)およびinterleukin-1β(IL-1β)の産生阻害剤であり,教室では,心臓,脳,肺,肝臓を用いた実験を通して,虚血再灌流傷害抑制におけるFR167653の有用性を報告してきた.今回,本装置を用いた長時間心保存中,FR167653によるTNF-αおよびIL-1β産生抑制が移植後心機能を改善するか否かを検討した. 【対象および方法】雑種成犬(10-15kg)13組を対象とし.GIK液で心停止後,4℃のUniversity of Wisconsin (UW)液で冠血管床をwashoutし,心臓を摘出,直ちに保存を開始した.保存方法で対象を2群に分けた;対照群(n=7,浸漬液および灌流液には4℃のUW液を使用)とFR群(n=6,浸漬液および灌流液には4℃のUW液に20mg/LのFR167653を添加したものを使用).12時間保存後,同所性心移植を行った.再灌流後2および3時間の循環動態(CO,LVP,LVdp/dt)をRAP 10mmHg, DOA 5μg/kg/minの条件下で測定し,心摘出前の数値を100%とした値の変化率を2群間で比較した.さらに移植後冠静脈血中TNF-αレベルを比較した.また,再灌流後3時間の心筋の電子顕微鏡所見を比較検討した. 【結果】再灌流2時間後のCO,LVPおよびLV±dp/dtは2群間で有意差はなかった.しかし,再灌流3時間後のCO,LVPおよびLV-dp/dtは,FR群が対照群に比較して有意に(p<0.05)良好であった.再灌流3時間後の冠静脈中TNF-αレベルは,FR群が対照群に比べ有意に(p<0.05)低値であった.心筋の電子顕微鏡所見では,両群ともに心筋繊維は良好に保たれていたが,FR群でグリコーゲン穎粒の保存状態がより良好であった. 【結語】長時間心保存中の炎症性サイトカイン抑制は心移植後の安定した循環動態を得るために有用と考えられる.
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