2004 Fiscal Year Annual Research Report
膵癌肝転移に対する腫瘍細胞特異的結合性リポソームを用いた新たな治療法の開発
Project/Area Number |
15591403
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北川 透 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (40314322)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 壽記 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (20231152)
西田 俊朗 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40263264)
|
Keywords | 膵癌 / 肝転移 / コンドロイチン硫酸 / ポリエチレングリコール・リポソーム |
Research Abstract |
我々はコンドロイチン硫酸(CS)と高い結合性を示す新規脂質TRX-20を結合させたポリエチレングリコール・リポソーム(TRX-20Lip.)を開発し、これにシスプラチンを封入してDrug Delivery Systemとしての有用性を報告した。今回、これを利用して膵癌の予後改善のため、膵癌肝転移に対する新たな治療法を開発することを目的とした。膵癌におけるCSの発現:1992年より2000年までに手術施行された膵癌、大腸癌、胃癌の切除組織でのCS発現を免疫組織染色法にて検討すると、膵癌ならびに大腸癌でのCS発現は、正常組織や胃癌に比べ有意に高かった。また、臨床病理学的因子とCS発現との間に相関は認めなかった。ゲムシタビン封入TRX-20リポソームに関する検討:ゲムシタビン(GEM)を封入したTRX-20Lip.(GEM-TRX-20Lip.)は、GEMの封入量が1250μMまでは漏出も認めず安定であった。膵癌腫瘍細胞株を用いた検討:TRX-20Lip.とヒト膵癌細胞株との結合性は、CFPAC-1やPK-45のようなCS高発現株(cell ELISA法にて判定)と有意に高く結合し、一方CS低発現株MIAPaCa-IIやHPACとはほとんど結合しなかった。CFPAC-1ならびにCS低発現株HT-29(ヒト大腸癌細胞株)に対するGEM-TRX-20Lip.,GEM-TRX(-)Lip.,GEM単独の10〜300nMでの抗腫瘍効果は、薬剤接触時間を90分とし、3日間培養後の抗腫瘍効果を測定すると、10〜150nMでは有意差を認めなかったが、300nMではGEM-TRX-20Lip.が有意にCFPAC-1の増殖を抑制した。一方HT-29では2,500〜5,000nMでGEM単独が有意に細胞増殖抑制効果を示した。遺伝子導入に関する検討(in vitro):in vivoにおける検討:CFPAC-1担癌マウスにおけるTRX-20 Lip.をの投与後24時間での生体内分布を検討すると、皮下腫瘍においてTRX-20Lip.をが対照のLip.をに比べ有意に高く集積した。一方HT-29皮下腫瘍担癌マウスでは有意差を認めなかった。以上より、TRX-20Lipは、大腸癌以外に膵癌に対しても有用性が確認され、シスプラチン以外の抗癌剤も封入可能であり、今後さらに幅広い領域での応用が期待される。
|
Research Products
(6 results)