Research Abstract |
平成1516年度の実験計画として,ビタミンD誘導体の臨床治療への応用の可能性を予測するとともに,更なる抗転移効果を期待してビタミンD誘導体に他の治療薬を組み合わせた治療を行うための理論的根拠を得るのが目的で以下の実験を行った. 我々は,ヒト膵癌細胞株SUIT-2の亜株であるS2-007(mod),S2-013(wel),S2-020(por),S2-028(pap-tub)について活性型ビタミンDおよび22-oxacalcitriolによる増殖抑制効果に違いがあることをMTT assayを用いた実験系で発見し発表した(第42回癌治療学会).増殖抑制効果は濃度依存性であり,その効果の高い順にS2-028>S2-007,S2-013>S2-020であり,S2-028では培養液中の濃度10^<-7>Mレベルで発現抑制が認められた.これらはVDRの発現が高く活性型ビタミンDによるmRNAレベルの誘導効果が高かった.前年度の研究に基づきまずこれらの遺伝子について亜株間の遺伝子プロファイルの違いを検討するためにcDNAアレイを用いた網羅的遺伝子検索を行った.特に癌の転移増殖に関する下記遺伝子70種(ACTB, AMFR, FGF2,CTSB, PECAM1,CD34,CDH1,EGFR, ETS1,FLT1,FLT4,FOS, KDR, MMP1,MMP2,MMP3,MMP7,MMP9,MET, MMP14,MMP16,MYC, RELA, NME1,NME2,SERPINE1,SERPINB2,TFRC, TGFA, TGFB1,TGFB2,TGFB3,TGFBR3,TIE, TEK, PLAU, PLAUR, VEGF, VEGFC, ITGA2,ITGA3,ITGA4,ITGA5,ITGA6,CTNNA1,ITGAV, THBS1,ITGB1,ITGB3,ITGB5,CTNNB1,AHCY, CBS, DNMT1,DNMT3A, HDAC1,HDAC2,HDAC3,HDAC4,HDAC5,HDAC6,MAT1A, MAT2A, MAT2B, MBD2,MBD3,MBD4,MECP2,MTHFR, MTR, CTSL, ANGPT2)の中で,特にS0-028で他の亜株に比して良い発現がみられたものとして下記の9遺伝子があげられる:EGFR, MMP1,MMP3,MMP7,TGFB2,TGFBR3,PLAU, ITGA2,ANGPT2.活性型ビタミンDによる増殖抑制効果はビタミンD受容体(VDR)の発現とビタミンD投与によるVDR mRNAレベルの誘導効果の高い亜株ほど高く,VDRを介した経路が最も考えられた.
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