2003 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌・大腸癌の腸管免疫に関与する細胞性免疫担当細胞の病態と機能
Project/Area Number |
15591438
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
村上 三郎 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (00240987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 廉三 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10014317)
辻 美隆 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (40227400)
坂田 秀人 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10255101)
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Keywords | 胃癌 / 大腸癌 / IL-2R / IgA / CD3 / 細胞性免疫 / サイトカイン |
Research Abstract |
腫瘍部位において活性化されたT-lymphocyteによりInterleukin-2(IL-2)が産生されるが、このIL-2が特異的膜レセプターと結合し、その一部が可溶性Interleukin-2Receptor(IL-2R)として血液循環中に漏出してくる。事実、胃癌症例215例の血中IL-2R値を測定し、正常コントロール群に比較し有意に高値を示すことが認められた(479±30 vs 347±27U/ml、P<0.02)。さらに、早期胃癌(深達度s, sm)74例に較べて進行胃癌では有意に高値を示した(532±59 vs 380±27U/ml、P<0.05)。早期胃癌74例中リンパ節転移を認めた6例のうち5例で血中IL-2R値が高値を示した。所属リンパ節のうち85%がTリンパ球であることを考慮すると、転移したリンパ節内でのTリンパ球が癌細胞によって活性化されていると思われる。同様に、大腸癌155例の血中IL-2R値測定でも正常群に比較し有意に高値を示した。以上より、胃癌、大腸癌では細胞性免疫が亢進していると判断されるが、さらに、癌組織および正常組織における免疫染色を行い、細胞性免疫担当細胞の極在、病態、および機能を検討した。胃癌25症例の手術時に採取された標本の一部を用いて、IL-2R/Tac抗原陽性細胞、さらにはCD3、IgA抗体を用いた免疫組織染色を行った。胃癌組織内および転移性リンパ節における免疫組織染色によって多数のIL-2R/Tac抗原陽性細胞が確認されたが、正常粘膜および非転移性リンパ節ではこれを認めなかった。同様の所見が、大腸癌21例においても認められた。以上の研究にて、胃癌、大腸癌において腫瘍内浸潤リンパ球の存在と活性型Tリンパ球の存在が確認されたわけであるが、その時行った免疫組織染色で正常粘膜と癌粘膜との間に大きな相違があることを発見した。すなわち、正常粘膜部では上皮細胞間リンパ球(intraepithelial lymphocyte : IEL)がIL-2R/Tac抗原で染色された一方で、癌粘膜部ではこれが全く認められなかった。さらに、IgAの免疫染色を行ったところ、正常粘膜部表面に近接して多数のIgAが確認された一方、癌粘膜部ではこのIgAが全く認められなかった。また、CD3の免疫染色を行ったところ、癌部および正常部にかかわらず均一に分布していることが認められた.以上の事実より、癌腫内には活性型Tリンパ球が多数存在するものの、癌粘膜部での上皮細胞間リンパ球は癌細胞によって機能を失い、胆管粘膜としての防御バリアーが完全に破壊されていると思われる。
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