2004 Fiscal Year Annual Research Report
脳腫瘍における中性アミノ酸トランスポーター発現の生物学的意義及び新規治療法の開発
Project/Area Number |
15591547
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
永根 基雄 杏林大学, 医学部, 講師 (60327468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩川 芳昭 杏林大学, 医学部, 教授 (20245450)
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Keywords | LAT1 / Amino acid / Transporter / Glioma / 4F2hc / BCH / System L / Tumorigenicity |
Research Abstract |
悪性腫瘍細胞は正常細胞に比べ増殖能が上昇しており,細胞内代謝も亢進していると考えられる.輸送系L中性アミノ酸トランスポーターの構成分子であるLAT1は,4F2hcとの共発現により必須アミノ酸の輸送を担っており,最近癌細胞でも発現していることが報告された.我々はglioma細胞におけるLAT1の発現とその生物学的意義につき検討した.ヒトglioma細胞株では過半数の細胞株でLAT1の発現がmRNA及び蛋白レベルにて認められ,4F2hc mRNAは全ての細胞株で発現が認められた。LAT1高発現の細胞では,中性アミノ酸の細胞内取り込み能は亢進していた.LAT1高発現のLNZ308細胞を輸送系Lの阻害剤BCHで治療すると,細胞増殖が有意に抑制され,BrdU LIの減少とTUNEL陽性率の増加が認められたことから,BCH治療は細胞周期進行の阻害と細胞死を誘導することが明らかになった.その作用と相関して,BCH治療により細胞周期関連蛋白のp21の発現誘導と細胞死関連のPARPの切断が検出され,BCH治療効果の分子機序が示唆された.LAT1の発現・活性が低下を示すヒトglioma細胞株U87MG細胞にヒトLAT1発現ベクターを遺伝子導入し,LAT1を高発現する細胞株U87MG.LAT1を樹立した.この細胞はin vitroでは対照細胞(親株,空ベクター導入細胞)と比べ,増殖能に差が認められなかったが,ヌードマウスの皮下腫瘍モデルでは,U87MG.LAT1細胞由来の腫瘍で有意に増殖率の亢進が認められた.更に脳内腫瘍移植モデルでは,U87MG.LAT1細胞を移植したマウスで生存期間が有意に短縮し,脳内においてもLAT1高発現細胞の造腫瘍性の亢進が示された.以上より,LAT1は多くのglioma細胞に発現しており,その高発現はgliomaにおける造腫瘍性に関与していることが示唆された.更にLAT1は,難治性である悪性神経膠腫に対する新たな分子標的となる可能性が考えられ,今後より特異性が高く,低濃度で輸送系Lを阻害する低分子化合物の開発が期待される.
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Research Products
(6 results)