2003 Fiscal Year Annual Research Report
Adiposcienceの観点からのステロイド性骨壊死の病態解析と予防法開発
Project/Area Number |
15591587
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山本 卓明 九州大学, 大学院・医学研究院, 助手 (20336035)
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Keywords | 骨壊死 / ステロイド / 予防法 / 大腿骨頭 / 脂質代謝 / 凝固異常 / 脆弱性骨折 / 病理組織 |
Research Abstract |
1 脂質代謝との関連の解析 ステロイド性骨壊死の病因の一つに、脂質代謝異常の関与が長年にわたり提唱されている。しかし、具体的なメカニズムは全く不明であったが、骨壊死動物モデルを用いた解析により、LDL/HDL Ratioが高い群は末梢梢組織である骨へ脂質が転送されやすく、その結果有意に骨壊死発生率が高いことが判明した。さらにステロイド投与前の中性脂肪の高値と骨壊死発生が有意に関連していることも判明した。 2 予防法の開発 (1)高脂血症治療薬を用いた検討 ステロイド単独投与骨壊死モデルにおいて、以下の2グループを作成し、それぞれ骨壊死発生率を比較検討した。MPSL20mg/kgを一回のみ筋注した群(20羽)をコントロール群(C群)、これにプロブコール(300mg/kg/day)を経口投与した群(29羽)をP群とした。C群、P群における骨壊死発生率はC群:70%,P群:37%、平均骨壊死巣数はC群:3.2,P群:1.8で、ともにプロブコール投与群が有意に(P<0.01)低い値を示した。本事実は、骨壊死の病因に脂質代謝異常が重要な役割を果たしていることをしめしている (2)高脂血症治療薬および抗凝固剤を用いた検討 さらに、プロブコールに加え抗凝固剤であるワーファリンを併用投与した場合、骨壊死発生率は5%まで有意に低下した。以上より、ステロイドによる凝固系活性化と脂質代謝異常がステロイド性骨壊死発生の重要な要因の一つと考えられた。 3 鑑別疾患の確立 大腿骨頭壊死症と鑑別を要する疾患の一つとして、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折が重要であることを、世界で初めて病理組織学的に提唱した。本骨折は、これまで大腿骨頭壊死症と誤って診断されてきたことが多く、これは骨壊死の病態解明を複雑なものとさせてきたため、本骨折の啓発を行っている。これにより真の骨壊死患者の絞り込みが可能となった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 山本卓明, 宮西圭太, 中島康晴, 他: "一過性大腿骨頭萎縮症の病態"Hip Joint. 29. 270-273 (2003)
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[Publications] 末永英慈, 野口康男, 神宮司誠也, 首藤敏秀, 中島康晴, 山本卓明, 他: "術中超音波検査を用いた大腿骨頭回転骨切り術における栄養血管の血流確認法"整形外科と災害外科. 52. 1-4 (2003)
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[Publications] Tokuya S, Kusumi T, Yamamoto T, Sakurada S, Toh S.: "Subchondral insufficiency fracture of the humeral head and glenoid resulting in rapidly destructive arthrosis"J Shoulder Elbow Surg. 13. 86-89 (2004)
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[Publications] 山本卓明, 岩本幸英: "Subchondral insufficiency fracture - 軟骨下脆弱性骨折 -"臨床画像. 19. 788-795 (2003)
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[Publications] 山本卓明, 本村悟朗, 神宮司誠也, 岩本幸英: "大腿骨頭壊死症と軟骨下脆弱性骨折の鑑別点"厚生労働省特定疾患特発性大腿骨頭壊死症研究分科会研究報告書. 61-62 (2003)
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[Publications] 本村悟朗, 山本卓明, 宮西圭太, 神宮司誠也, 岩本幸英: "プロブコール及びワ-ファリンを併用したステロイド性骨壊死予防実験"厚生労働省特定疾患特発性大腿骨頭壊死症研究分科会研究報告書. 53-55 (2003)