2004 Fiscal Year Annual Research Report
成熟損傷脊髄におけるオリゴデンドロサイト前駆細胞の分化とその誘導
Project/Area Number |
15591604
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
渡辺 雅彦 東海大学, 医学部, 講師 (40220925)
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Keywords | 外傷性脊髄損傷 / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 再髄鞘化 / Nkx2.2 / サイトカイン |
Research Abstract |
圧挫損傷による外傷性白質脱髄モデルを作成し、胎生期オリゴデンドロサイト分化制御因子のひとつであるNkx2.2と、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)分化との関連及びサイトカインの関与を検討した。深麻酔下にラットの第6/7頚椎椎弓を切除。圧挫滅モデルは、35g重錘で脊髄を5分間圧迫した。比較対照用の化学的脱髄モデルは1%Lysophatidylcholine2μlを脊髄後索内に注入して作成した。損傷作成後2,7,14,28日後に損傷部脊髄を摘出し凍結切片を作成して、Nkx2.2とOPCマーカーのNG2、成熟オリゴデンドロサイト(OL)のマーカーのGSTYpと蛍光二重免疫染色を行い、さらに損傷後6,12,24,48時間後の損傷部脊髄でRT-PCR法によりサイトカインを検索した。 過去に報告した化学的脱髄モデルの実験では、損傷2日後に非脱髄部のNkx2.2陽性OPCが、7日後に脱髄部のNkx2.2陽性OPL・OL双方が最大値となり、以後の再髄鞘化も認めた。一方、今回の圧挫脱髄モデルでは、損傷2日後の非脱髄部Nkx2.2陽性OPCは有意な増加は示さず、以後も、Nkx2.2陽性OPC・OLともに有意な増加は認められなかった。脱髄部では、14日後に、Nkx2.2陽性OPCが最高値を呈し、有意な増加を認めたが、その値自体は化学的脱髄と比べ低値であり、以降は減少傾向を呈し、同部での明らかなNkx2.2陽性OLは認めなかった。サイトカインの検出では、圧挫滅脱髄モデルで、6〜12時間後のIL-1β、12時間後のTGFβ1、24時間後のIL-10強発現を認めたのに対し、化学的脱髄ではいずれも発現は微弱であった。また、化学的脱髄モデルで12時間後にIL-6の発現を認めたのに対し、圧挫滅脱髄モデルでは明らかな発現は認められなかった。以上の結果により、外傷性損傷による特異的な環境因子が、脱髄部周囲の増殖したOPCにおけるNkx2.2の発現を抑制し、OPC分化抑制にも関与している可能性が考えられ、その因子の一つとしてサイトカインの関与が考えられた。
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