Research Abstract |
1(背景・目的).運動が骨髄細胞の分化に影響を及ぼすか否か,骨髄細胞の分化が海面骨,皮質骨にどのような形態変化をもたらすかを明らかにするために本研究を行ってきた.昨年度は,エストロゲン欠乏状態マウスに対する自発的クライミング運動が,卵巣摘出に伴う海綿骨量減少を抑制することを明らかにした.本年度は,エストロゲン欠乏状態マウスの骨に対する運動効果の作用機序を明らかにするため,力学負荷に関与する遺伝子とされるエストロゲンレセプターα(ERα)に注目し,以下の実験を行った。 2(方法).8週齢C57BL/6J系雌マウス100匹を,10匹ずつ10群に分けた.実験開始時コントロール群と,偽手術コントロール群(sham),2,4,8週時の卵巣摘出群(OVX),卵巣摘出運動群(OVX+Ex)を作成し,計10群とした.評価項目は,骨塩定量、脛骨海面骨による組織形態計測,定量的RT-PCR法を用いた大腿骨whole boneでのERα遺伝子発現量と骨芽細胞分化誘導遺伝子であるc-fos遺伝子発現量とした. 3(結果・考察).骨塩定量では,8週で卵巣摘出により骨塩量は減少し,運動によりその減少が抑制された,形態計測は,OVX群では,4週から海綿骨量はsham群と比べ減少した.OVX+Ex群では,4週から海綿骨量はOVX群に比べ増大した.海面骨量への効果は8週まで同様に持続した.骨形成能は,OVX+Ex群では8週で,骨石灰化面および骨形成率はOVX群に比べ増大していた.定量的RT-PCR法では,ERα,c-fos発現量は,OVX+Ex群が8週で,OVX群に比べ有意に増加していた. 4(結論).エストロゲン欠乏状態での運動負荷マウスの海綿骨骨量の減少防止効果は,最初に吸収亢進の抑制がおこり,引き続き生じる骨形成亢進による.この骨形成亢進作用は,ERα,c-fos発現量増加と関連があると考えられる.
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