2003 Fiscal Year Annual Research Report
気象変化による慢性痛増強のメカニズムの解明-交感神経依存性疼痛疼痛との関連性-
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15591623
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 純 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (00235350)
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Keywords | 気象病 / 交感神経 / 疼痛 |
Research Abstract |
1、気象病の病態機構を探るため、日常体験する程度の寒冷、低気圧環境がラットの自律神経パラメータに与える影響を調べた。曝露実験は環境シミュレータを用い、低気圧曝露では気圧を大気圧から27hPa減圧した。低温曝露では室温を22℃から15℃まで冷却した。低気圧曝露により心拍数と血圧は一過性に上昇した。心拍間隔変動値(LF/HF値)も速やかに上昇した。曝露後はすみやかに曝露前値に戻った。低温曝露により血圧・心拍数は徐々に上昇した。LF/HF値は曝露直後に速やかに上昇、その後低下するが曝露後半に再度上昇した。曝露後は曝露前値にゆっくりともどった。以上より、両曝露はラットの血圧・心拍数を異なった時間経過で上昇させることが分かった。また心拍間隔変動の解析により、両曝露は交感神経>副交感神経の自律神経バランスを惹起することが分かった。気象変化は交感神経系を興奮させることで気象病の症状を悪化させている可能性が示唆された。 2、気圧検出器官が内耳に存在する可能性を実験的内耳破壊ラット用いて検証した。一側の坐骨神経絞扼手術を施し慢性神経痛ラットを作成した。両側の中耳腔に鼓膜を介して砒素を注入し前庭破壊を施した。後肢足底に圧刺激を与え逃避行動を観察した。環境シミュレータ内でラットを低気圧(大気圧から27hPa減圧)、低温環境(室温を22℃から15℃まで冷却)に曝露した。低気圧曝露は、神経痛群でみられた痛覚過敏行動を増強したが、この効果は前庭破壊によって消失した。一方、低温曝露でみられた痛覚過敏行動の増強は、前庭破壊の影響を受けなかった。以上のことから、前庭破壊は低温曝露によって引き起こされる痛覚過敏行動には影響を及ぼさず、気圧低下によって引き起こされる痛覚過敏行動のみを抑制すると考えられ、気圧センサーが内耳器官に存在する可能性を示唆した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Sato J.et al.: "Artificially produced meteorological changes aggravate pain in adjuvant-induced arthritic rats"Neuroscience Letters. 354. 46-49 (2004)
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[Publications] Sato J.: "Weather change and pain : a behavioral animal study of the influences of simulated meteorological changes on chronic pain"International Journal of Biometeorology. 47 2. 55-61 (2003)
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[Publications] 佐藤 純: "気象変化による慢性痛悪化のメカニズム"日本生気象学会誌. 40 4. 219-224 (2003)