2003 Fiscal Year Annual Research Report
神経原性骨病変の発生に関する研究(2)不動化マウスと大理石病マウスを用いる研究
Project/Area Number |
15591632
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川口 浩太郎 広島大学, 医学部, 講師 (60263703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 惠理子 広島大学, 医学部, 助手 (40304422)
弓削 孟文 広島大学, 医学部・歯学部附属病院, 教授 (40034128)
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Keywords | CCIモデル / 不動モデル / 骨萎縮 / 神経因性疼痛 / マクロファージ |
Research Abstract |
神経因性疼痛を合併する患者の中には骨萎縮が観察されるケースがあり、その神経因性疼痛の代表的動物モデルである紋扼性神経損傷(chronic constriction injury:以下CCI)モデルにおいても、術側の骨での骨萎縮が報告されている。また、神経因性疼痛の病態の一つとして、末梢神経での炎症が考えられ、マクロファージが損傷部位へ浸潤し、炎症性サイトカインを放出すると言われている。そこで本研究ではマウスに対してCCI術、不動処置を実施し、光熱刺激に対する逃避反応(以下逃避反応)と、術後に生じる骨萎縮の酵素組織学的検討、またCCI術を行った坐骨神経へ浸潤してくるマクロファージとの関係についても検討した。 対象にはC57BL/6N系雄性マウス62匹を用い、CCI術のみ行なったCCI群23匹、不動処置のみを施した不動(imobilized:以下IM)群17匹、CCI術実施後、不動処置を施したCCI+IM群22匹とした。CCI+IM群はCCI術に加え、術後1日よりIM群と同様の処置を行なった。CCI群、CCI+IM群には術前および術後に熱刺激による行動観察を週毎に実施した。また、術後3週において各群それぞれ潅流固定後、坐骨神経と脛骨を摘出した。摘出した脛骨に対しTRAP染色を行ない、染色後、骨端線の面積を測定し、単位面積あたりの破骨細胞数を算出した。CCI群23匹の坐骨経に対してはパラフィン切片を作成後、F4/80抗体(CEDARLANE)を用いてマクロファージを染色した。その後、組織画像をパーソナルコンピュータに取り込み単位面積当たりのマクロファージ数を測定した。 結果として、熱刺激による行動観察:術側の逃避反応潜時から非術側の逃避反応潜時を差し引いたDifference Scoreは術前と比較して術後1、2、3週において有意に低値を示した。硬骨細胞数:術側の破骨細胞数は3群間で有意な差は認められなかった。またCCI+IM群の術側の破骨細胞数は非術側と比較して有意に増加していた。また、CCI群、IM群においても、非術側と比較して術側の破骨細胞数が増加している個体が観察された。マクロファージ数:マクロファージの浸潤数は、術後1週と比較して、術後2、3週では有意な差が認められた。また、術後1週で最多となり、術後2、3週と徐々に減少することが観察された。 本研究では行動観察の結果よりCCI群、CCI+IM群ともにCCIモデルが作成されえていると考えられた。また、破骨細胞数は術側と非術側を比較してIM群においては有意な差が認められないが、CCI+IM群では術側において有意に増加しており、不動以外の何らかの要因が破骨細胞の増加に関与していることが考えられた。D.S.とマクロファージの浸潤数について、術後1週ではマクロファージの浸潤数は増加し、D.S.は低値を示した。このことは、術後1週では、逃避反応と坐骨神経へのマクロファージの浸潤数との間に何らかの関係があることを示唆する。今後IL-1やTNF-αなどの炎症性サイトカインの経時的変化や、それらと逃避反応との関係についても検討する必要があると考えられる。
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