2003 Fiscal Year Annual Research Report
虚血/再灌流による腎血管内皮の抗原性亢進が移植免疫応答に及ぼす影響と抑制法の検討
Project/Area Number |
15591668
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
佐藤 滋 秋田大学, 医学部, 助教授 (80187195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
妹尾 春樹 秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)
佐藤 充 秋田大学, 医学部, 助教授 (60226008)
小松田 敦 秋田大学, 医学部, 講師 (70272044)
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Keywords | 虚血 / 再灌流障害 / 血管内皮 / 副刺激シグナル / CD80 / CD86 / ポリフェノール / レスベラトロール / NO |
Research Abstract |
虚血/再灌流障害の病態については、当初は細胞の浮腫や再灌流後の血流障害、細胞死など生理的側価が主体に考えられていた。しかし近年、低酸素や酸化窒素の作用とその非生理的刺激による細胞応答が注目されている。すなわち、虚血/再灌流によって臓器のHLA抗原や細胞接着分子の発現が亢進することが報告されている。この移植片自体の抗原性の亢進はレシピエントの免疫系を刺激し、拒絶反応を容易に誘発し移植片の長期生着を阻害する可能性を含んでいる。 私達は、レシピエントのリンパ球が最初に接する血管内皮細胞自体が抗原提示細胞の役割を担い、虚血/再灌流時にその抗原性が亢進し、T細胞が活性化するとの仮説をたてた。血管内皮細胞の抗原提示能力については、T細胞活性に重要な副刺激シグナルに関与する細胞表面抗原(CD80、CD86)に注目してきた。これはHLA抗原のみならず副刺激シグナル抗原を有することで、抗原提示細胞としての能力が発揮されるからである。その結果、腎では糸球体内皮細胞と傍尿細管血管内皮細胞、肝では肝類洞内皮で虚血/再灌流障害時にCD80とCD86の蛋白と遺伝子の発現が亢進することを認めた。 以上の研究結果を踏まえ、虚血/再灌流による血管内皮細胞の免疫応答を抑制する方法を動物実験で検討した。その方法として、酸化窒素活性抑制剤であるレスベラトロール(ポリフェノール)をラット腎虚血/再灌流障害モデルに投与し、虚血/再灌流障害後の腎機能とCD80、CD86の発現程度を観察した。その結果、抗酸化剤投与ラットでは虚血/再灌流後の血清クレアチニン値の上昇が有意に抑制され、また血管内皮細胞でのCD80、CD86の発現が抑制されていた。今後、mRNAの定量とNO発現を確認していく。 また、臨床例での腎機能回復速度と末梢血リンパ球サブセットの変化についても検討を加えて、各々学会・論文発表を予定している。
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