2004 Fiscal Year Annual Research Report
過活動膀胱における神経伝達物質受容体特性の解析と創薬
Project/Area Number |
15591703
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
山田 静雄 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80106434)
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Keywords | 過活動膀胱 / ムスカリン性受容体 / 脊椎損傷モデル / 前立腺肥大 / ラジオレセプターアッセイ / [3H]NMS / 解離定数 / 最大結合部位数 |
Research Abstract |
本研究は、過活動膀胱における病因を膀胱における神経伝達物質受容体異常の面から検証し、その有効かつ安全な薬物療法を確立することを目的とする。本年度は、ATP受容体及びムスカリン性受容体(mAChR)を測定し、mAChRサブタイプの分布、膀胱及び顎下腺(ヒトでは耳下腺)mAChR受容体結合活性を調べた。また、ヒトの正常および過活動膀胱の各受容体に対する結合活性も検討した。 (1)ラット膀胱の受容体標品において、[^3H]αβ-MeATPは飽和性の特異的結合を示した。αβ-MeATP、βγ-MeATP、MRS2273、PPADSおよびsuramineは、いずれも膀胱への[^3H]αβ-MeATP特異的結合を濃度依存的に抑制し、その結合親和性はαβ-MeATP>βγ-MeATP>suramine>PPADS>MRS2273の順であった。これより、ATP (P2X)受容体がラット膀胱に存在することが示され、本受容体は創薬標的分子となることが示唆された。 (2)下部尿路および唾液腺におけるmAChRサブタイプの局在を明らかにする目的で、野性型(WT)およびmAChRサブタイプ欠損(KO)マウスの末梢組織mAChRを測定した。下部尿路および唾液腺においては、mAChRのM_2もしくはM_3サブタイプが高密度に局在することが示された。 (3)ラットにオキシブチニン(Oxy)を経皮投与することにより,膀胱及び顎下腺mAChR受容体への有意な結合が認められ,顎下腺受容体結合は経口投与の場合より減弱した。また、ソリフェナシン(Sol)は経口投与により膀胱受容体に有意に結合し,その作用はOxyの場合より緩徐に発現し,且つ持続的だった。尿失禁・頻尿治療におけるOxyの経皮投与及びSolの有用性が示唆された。 (4)トルテロジン(Tol)は経口投与により膀胱mAChRに結合し,その結合様式はOxyと比べ緩徐かつ持続的であった。またTolの唾液分泌抑制作用は,Oxyと比べ有意に減弱することが示された。 (5)ヒト膀胱および耳下腺の受容体標品において、[^3H]NMSの特異的結合が認められた。両組織における[^3H]-NMS特異的結合は飽和性および高親和性を示した。これより、[^3H]NMSは両組織mAChRを選択的に標識することが明らかになった。Oxy及びTolはいずれも膀胱と耳下腺への[^3H]NMS特異的結合を濃度依存的に抑制しのmAChR結合親和性は耳下腺で高い傾向を示したが、Tolの親和性は膀胱において耳下腺より約2倍高かった。また、ラット及びマウスにおけるTolの唾液分泌抑制作用は、Oxyに比べ有意に弱かった。以上の結果より、TolはOxyよりヒトにおいて口渇の副作用が減弱することが示唆された。
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Research Products
(7 results)