2005 Fiscal Year Annual Research Report
精巣上皮細胞のNGF受容体に対する一酸化窒素の影響
Project/Area Number |
15591722
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
小野田 眞 独立行政法人放射線医学総合研究所, レドックス制御研究グループ, 主任研究員 (20260234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝部 孝則 独立行政法人放射線医学総合研究所, 低線量生体影響研究プロジェクト, 研究員 (10311375)
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Keywords | 精巣上皮細胞 / セルトリ細胞 / NGF / NGF受容体 / p75 / TRK / 一酸化窒素 |
Research Abstract |
・セルトリ細胞の神経刺激因子受容体発現に対する一酸化窒素(NO)と神経刺激因子の影響: 前年度までに,セルトリ細胞のNGF-R(p75),TrkBのタンパク質ならびにmRNAの発現がNOによって抑制される事を明らかにした.そこで,本年度はNOによる神経刺激因子受容体の発現抑制に対する神経刺激因子(リガンド)の影響について検討した. まず,セルトリ細胞をNOドナー(NOC18,0.4mM)と共に24時間培養した後,抗Trk-pan抗体を用いてウェスタンブロット解析をした結果,主要バンドの一つである分子量146kDaの免疫反応バンドの明らかな減少を確認した.これに対して,TrkBのリガンドであるbrain derived neurotrophic factor (BDNF,100ng/ml)をセルトリ細胞に添加して培養した場合には,146kDaタンパク質の増加が認められた.さらに,セルトリ細胞の培養系にNOドナーとBDNFを同時に添加した時には,抗Trk-pan抗体と反応する146kDaタンパク質の発現量はNOドナー未添加の対照セルトリ細胞と同程度までに回復していた.次に,BDNFに代えて神経成長因子(NGF,100ng/ml)をセルトリ細胞の培養系に添加したところ,BDNF添加の時と同様に,抗Trk-pan抗体と免疫学的に反応する146kDaタンパク質の明らかな増加が認められ,NOドナーの添加による146kDaタンパク質の減少もNGFが共存する事によって抑制されていた.これらの結果は,過剰のNOによって惹き起こされるTrk受容体の減少がBDNFやNGFといったneurotrophic factors(神経刺激因子)の共存によって抑制されることを示すものである. これらの結果を踏まえて,セルトリ細胞のTrk受容体の発現と局在性に対するNOとリガンドの影響について,免疫細胞化学的染色法によって検討した.未処理の対照セルトリ細胞では,抗Trk-pan抗体と免疫学的に反応するタンパク質の蛍光染色像が微弱ながら細胞表面全体(細胞膜上)に観察された.これに対して,NOドナー添加後ではその蛍光像は明らかに減弱していた.また,BDNF添加によって細胞表面と核における蛍光染色像の増強が認められた.さらに,NOドナーによる抗Trk-pan抗体と反応するタンパク質の蛍光像減少はBDNFの共存によって回復していた.これらの結果はウェスタンブロット解析で得られた結果と良く符合していた.以上の事から,精巣における過剰のNO産生はセルトリ細胞の神経刺激因子受容体の発現を抑制し,受容体下流のシグナル伝達系制御に変調をもたらし,精子形成の統御の異常を惹き起こす事が考えられる.これに対して,受容体のリガンドであるNGFやBDNFといった神経刺激因子はNOのこうした影響を抑制し精子形成の統御を維持する事が出来ることが明らかになった.
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Research Products
(1 results)