2004 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムインプリント機構の破綻と発癌機構に関する研究
Project/Area Number |
15591758
|
Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
有馬 隆博 九州大学, 生体防御医学研究所, 助手 (80253532)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 聖子 九州大学, 生体防御医学研究所, 講師 (10253527)
加藤 秀則 九州大学, 大学病院, 講師 (60214392)
松田 貴雄 九州大学, 大学病院, 助手 (10304825)
和氣 徳夫 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (50158606)
|
Keywords | ゲノムインプリント / 癌抑制遺伝子 / ZAC / アポトーシス / 卵巣癌 / DNAメチル化 |
Research Abstract |
父由来、母由来の対立遺伝子が、それぞれ特異的な発現様式を示す現象をゲノムインプリント(GI)という。また、GI機構の破綻は悪性腫瘍や先天性疾患と関連する。我々はヒト染色体6p24の領域に、GI遺伝子のクラスターを形成していることを世界で初めて報告した。この領域は新生児一過性糖尿病の責任領域であると同時に、様々な癌組織でLOHの頻度が高いことも知られている。この領域に存在するインプリント遺伝子ZACに注目した。 1.卵巣癌におけるZACの不活化 28例の卵巣癌組織を用い、レーザーマイクロダイセクション法で、癌部と非癌部に正確に区別し、RNAを抽出し、定量PCR法で比較した。ほとんど全ての症例で癌部でZACの発現が低下していた。次にZACの遺伝子変異についてPCR-SSCP法で解析したが遺伝子変異は1例もなかった。ZAC/DMRのメチル化についてBS-PCRで解析した。癌部において非癌部より全体にメチル化が亢進し、発現量とメチル化の強い逆相関がみられた(Spearrmanの相関係数は0.85)。この関係が早期癌でもみられ、DNAメチル化は比較的早期の癌化過程で起こる変化と予想された。 2.ZAC遺伝子の癌抑制機能 1)テトラサイクリンによりZACの発現を誘導する卵巣癌細胞株を樹立した。ZACの発現亢進に伴い細胞増殖抑制と造腫瘍能抑制が認められた。2)遺伝子導入した細胞株(野生型p53、変異型p53)を用いアポトーシスを誘導能について検討した。その結果ZACは、p53非依存症にアポトーシスを誘導することが判明した。またカスパーゼ8及び9阻害剤を用いアポトーシスが回避されたことから、両者のカスパーゼ経路を介していることも推測された。3)脱メチル化剤及び脱アセチル化阻害剤投与のいずれにおいてもZACの発現回復を認め、また両者でさらに発現の増強を認めたことにより、ZACの発現調節にはDNAメチル化だけでなくヒストンのアセチル化も関与することが予想された。以上の結果より、新しいインプリントを介した腫瘍形成のメカニズムの解明と、ZACが卵巣癌治療における新たな分子標的治療のターゲットとなり得る可能性が示唆された。
|
Research Products
(4 results)