2003 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚・皮下脂肪内の微小血管網を肥大させて利用するハイブリット型人工皮弁の開発
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15591899
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
三鍋 俊春 杏林大学, 医学部, 助教授 (50200077)
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Keywords | 人工真皮弁 / choke血管 / 人工真皮 / vascularlization / 血行領域 / 3-territory flap / 皮弁・人工真皮複合体 / axialization |
Research Abstract |
平成15年度の成果:ラットモデルにおいて皮膚・筋肉内の微細血管網(choke血管)を肥大化させ、それによりコラーゲンスポンジ製人工真皮(ペルナック^<TM>、グンゼ、京都)を栄養する「人工真皮弁」の生物学的作成(synthesis)に成功した。 方法:1.人工真皮の皮下埋入 ウィスター系ラット(200g、8週齢)の片側背部に頭尾方向8cm横幅2cmの長方形の皮弁を作成し、皮弁内頭側より、胸背動静脈、肋間動静脈、深下腹壁動静脈のほぼ同程度の血管径と血行領域vascular territoryを持つ3本の血管径を含めた。これを、3-territory flapと呼称する。このうち、中部の肋間動静脈を結紮・切断して、頭側・尾側の胸背、深腸骨回旋血管の2本を血管茎とし、皮弁外周は肉様膜まで切開して、皮弁と母床のつながりは2本の血管茎のみの双茎島状皮弁bipedicled island flapを作成した。反対側背部は同一個体内のcontrol sideとした。ここで、表層にシリコン膜を付着したコラーゲンスポンジ製人工真皮を、コラーゲンスポンジ面をbi-pedicled island flap裏面の肉用膜(panniculus carnosus)面に固定する複合体を作成した。人工真皮は皮弁よりも大きめとし、母床面や皮弁断面からの皮弁への血行再開を遮断した。2.血行の評価 1,3,4,5,7,9日目に、血管茎を胸背動静脈のみとする単茎皮弁mono-pedicled disland flapとした上で、肉眼的・組織学的所見に加えて、レーザー画像血流と血管造影により人工真皮弁の血行付加vascularizationの状態を評価した。 結果:肉眼的・組織学的には人工真皮は皮弁の裏面に生着して人工真皮・皮弁複合体を形成していた。2本の血管茎のうち胸背血管のみとしても複合体には血流があり、生存していると判断できた。レーザー血流像ならびに血管造影像では、1日目からchoke血管の拡張により、複合体内に縦貫する主軸化axializeされた血管束が、徐々に成長する様子が経時的に確認できた。すなわち、血管茎を付加された「人工真皮弁」が生成された。9日目には、人工真皮のシリコン膜が脱落して、人工真皮面を内腔側としてロールを形成するものを認めた。この管腔構造を呈した人工真皮・皮弁複合体の血管造影でも主軸化血管束を認めた。以上より、微細血行の主軸化=長肥大化と、人工・生体組織の複合化(ハイブリッド)が、同時進行で、かつ、約7日間という極めて短期間で可能であった。重症熱傷や褥瘡への臨床応用が期待される。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Chang H, Imanishi N, Minabe T et al.: "Comparison of Three Different Supercharging Procedures in a Rat Skin Flap Model"Plastic and Reconstructive Surgery. 113・1. 277-283 (2004)
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[Publications] 三鍋俊春: "褥瘡患者に積極的にオペをすべきか?"Visual Dermatology. 2・7. 728-729 (2003)
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[Publications] 宮本慎平, 三鍋俊春, 他: "十字吻合部を血管茎とするgluteal thigh flapによる仙骨、坐骨部褥瘡の再建"日本褥瘡学会誌. 5・2. 375 (2003)
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[Publications] 宮本慎平, 三鍋俊春, 他: "Axial patternの血行を持つ人工真皮弁の研究"第12回日本形成外科学会基礎学術集会 プログラム・抄録集. 50 (2003)
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[Publications] 松岡伯, 三鍋俊春, 他: "TRAM flapの実験モデル-ラット背部の正中を越える4-territory flapの検討"第12回日本形成外科学会基礎学術集会 プログラム・抄録集. 87 (2003)
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[Publications] 百澤明, 三鍋俊春, 他: "皮膚穿通枝にdominancyは存在するか-ラットdelayed flapの検討"第12回日本形成外科学会基礎学術集会 プログラム・抄録集. 87 (2003)
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[Publications] 三鍋俊春(分担執筆): "TEXT 形成外科 波利井清紀監修、森口隆彦・鳥居修平・中塚貴志編集"南山堂. 308-312 (2004)