Research Abstract |
昨年度までの成果により,無血清で培養した歯根膜および歯肉線維芽細胞が分泌する上皮細胞走化性困子はフィブロネクチンだけでなく,ラミニンも含まれていることが判明した。そこで本年度は,歯根膜線維芽細胞が分泌するラミニンに関する解析を行った。歯根膜線維芽細胞におけるラミニン各鎖の遺伝子発現を調べたところ,α1〜α5,β1〜β3,γ1〜γ3鎖すべての遺伝子を発現していた。続いてウェスタン・ブロッティングでタンパク発現を調べたところ,この細胞はおもにα4,α2,β1,β2,γ1各鎖を合成しており,これらの組み合わせによりラミニン-8/9および少量のラミニン-2/4を培養上清中に分泌していることが明らかとなった。部分精製したラミニンは,やはり上皮細胞に対する走化活性を有しており,その活性はインテグリンα3,α6,β1機能阻害抗体によって部分的に阻害された。さらに,抜去歯のヒト歯根膜組織におけるラミニンα2,α4鎖のタンパク発現を調べたところ,α2鎖は一部で,α4鎖はすべてにおいて発現が確認できた。 また,Uppsala Biobank Projectに参加し,一般に不安定とされるRNAが,組織のままの状態では常温でも予想以上に安定であるが,遺伝子発現レベルではやはり4℃での組織の保存が最も安定であることを明らかにした。 さらに,歯肉溝滲出液中に含まれるサイトカインをHuman cytokine antibody arrayを用いて分析した結果,10種類のサイトカインを新規に検出した。 最後に,癌細胞の増殖を支える周囲の線維芽細胞のモデルとされる,PDGF-Bを強制発現させたsis-NIH3T3細胞が,走化性因子非存在下で自発的にmigrateすることを見出した。この自発的migrationはフィブロネクチンによって顕著に阻害され,さらにその活性部位の一部はRGD配列であることを見出した。
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