Research Abstract |
これまで我々は,床用レジンや軟質裏装材に銀イオンを多孔質セラミックスに担持させたアパタイト系抗菌材を添加し,その機械的性質や抗菌性について報告してきた.しかしながら,我々が標的とするC.albicansは真菌であり,重金属類である銀イオンは義歯装着時にも抗菌性を発揮し,C.albicans以外の口腔内常在菌をも死滅させ,口腔内の細菌のバランスを崩すおそれがあった.酸化チタンは,光触媒であるため,義歯装着時には抗菌性を発揮せず,口腔内の細菌のバランスを崩すことはないと考えられたため,実験に用いた. 実験結果より,酸化チタン含有率1%で曲げ強さが最も高く,それ以上添加すると曲げ強さは低下することが確認された.曲げ強さとヌープ硬さ試験の結果から,酸化チタンの添加量を増加すると,試作床用レジンは硬く脆い性質となることが推察される. 吸水試験の結果では,含有率10%,20%の試料がコントロールの値に近似しており,吸水率の面では酸化チタンの含有率は多い方がよいことが示唆された.この結果は,曲げ強さ,ヌープ硬さの結果と相反しているが,床用レジンの物性を考えると,曲げ強さやヌープ硬さの結果の方が優先されると考えられる. このことから,酸化チタンは抗菌性の得られる最小限の添加量に抑えることが必要であると考えられた.一般に酸化チタンの添加量を増加し,短い照射時間で抗菌性を持たせる報告が見られるが,機械的性質を考慮した場合,酸化チタンの添加量を抑え,照射時間を長くするのが妥当であると考えられた. また,今回の実験ではルチル型より抗菌作用が高いとされているアナターゼ型を用いた.しかしながら,酸化チタンはレジンを分解するため,今後,このような問題のない酸化チタンが必要であると考えられる.
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