Research Abstract |
フマギリン誘導体である血管新生阻害剤TNP-470には,破骨細胞形成抑制作用ならびに骨吸収活性阻害作用を有することをin vitroならびにin vivoの骨吸収系モデルで明らかにしてきたが,TNP-470の破骨細胞性骨吸収抑制の分子機構は全く不明である.TNP-470により破骨細胞分化促進因子(RANKL, M-CSF)による破骨細胞前駆細胞→単核破骨細胞→成熟多核破骨細胞への分化が直接抑制されることに基づき,RANKL/RANKの結合から下流の転写因子NF-kBに至る細胞内情報伝達系を検討した. C57BLマウス脾細胞を回収し,TNP-470(10^0ng/ml)を添加し,M-CSF存在下で3日間培養後,破骨細胞分化促進因子であるsRANKLを添加し,経時的にタンパクを回収し,ウエスタンブロットにて,TRAF6,IkBα,pIkBαの発現を調べたが,TNP-470による発現に差はなかった.またc-核タンパクを,Trans Factor Kitを用いて転写因子であるNF-kBの発現を調べたが変化は認めなかった.またM-CSFの受容体であるc-fmsも遺伝子発現の抑制は認められなかったことより,別の抑制系路が示唆された. RANKL/M-CSFによる破骨細胞誘導に対し,TNP-470投与により変化する網羅的な遺伝子群に対して,RANKL/M-CSF添加より変化する遺伝子群,TNP-470添加で変化する遺伝子群の検索を,それぞれ種々のcDNA(1176種類)のDNAアレイを用いて網羅的にハイブリダイゼーションを行い,画像解析ソフトを用いて遺伝子の発現プロファイルを作製し,絞り込み検索を行った.評価は2倍以上の発現差を指標とした. 1.RANKL/M-CSFで発現が増加し,TNP470にて抑制される遺伝子群 1)TNP470単独で促進:7遺伝子,2)TNP470単独で抑制:9遺伝子,3)TNP470単独で変化無:13遺伝子 2.RANKL/M-CSFで発現が抑制され,TNP470にて促進される遺伝子群 1)TNP470単独で抑制:42遺伝子,2)TNP470単独で促進:9遺伝子,3)TNP470単独で変化無:38遺伝子 TNP470により抑制されるものには破骨細胞形成,機能と関連する転写因子,proto-oncogene,サイトカン受容体,熱ショック蛋白などが含まれていた.一方,TNP470により促進されるものにはアポトーシスおよびoncogeneに関連するものが多かった.
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