2003 Fiscal Year Annual Research Report
口腔癌の進展におけるCOX-2発現に伴なう細胞周期遺伝子異常について
Project/Area Number |
15592148
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
櫻井 一成 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (30129118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦出 雅裕 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70104883)
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Keywords | 口腔粘膜 / 口腔癌(扁平上皮癌) / 湿潤・転移 / COX-2 / 細胞周期制御遺伝子 / 免疫組織化学 / in situ hybridization / 予後因子 |
Research Abstract |
現在までにわれわれは、COX-2が口腔粘膜の発癌に、また本酵素の過剰発現が口腔癌の成長・発育および癌の浸潤・転移に密接に関与することを見い出してきた。本研究では、口腔癌の浸潤・転移機構の解明の一助とすやために、口腔癌細胞の増殖に関連する細胞周期関連遺伝子群の異常について検討を進めている。 本年度は、口腔扁平上皮癌(OSCC)の局所浸潤巣および転移リンパ節におけるCOX-2発現の意義と役割についてOSCCの生検・手術材料200例(通常型170例:転移、非転移例各85例、疣贅型30例)を用いSABC法による免疫組織化学的検討を施行した(対照:正常口腔粘膜20例)。この結果、通常型OSCCの77%で転移に伴うCOX-2蛋白の発現増強(平均上昇率19%)が示され、同時に検索したDNA-topoisomerase II alpha LI値の上昇傾向がみられた。また転移例のうちCOX-2発現上昇のみられた74%が予後不良で、これらはいずれもCOX-2高発現を示した。なお腫瘍原発巣においても転移例は非転移例に比しCOX-2の有意な上昇が認められた。さらに原発巣におけるT categoryの比較において、Tが大きくなるに連れCOX-2発現率が高くなる傾向が示された。以上より、COX-2が口腔癌の腫瘍成長を補助し、転移に際し促進因子として密接に関与するとともに、COX-2の発現増強が予後を左右する可能性を有するものと考えられた。次に腫瘍浸潤性格とCOX-2の関連性について検索したところ、原発巣においては腫瘍浸潤先進部に、また転移リンパ節においては節外浸潤部にCOX-2高発現が示され、本所見は腫瘍分化度の低い症例ほど顕著であった。以上の所見は、COX-2が口腔癌細胞の浸潤性格獲得ないしは増強に関与するものとして意義深いものと思われる。なお疣贅型OSCC30例においては、通常型に比べCOX-2発現は低値をしめした。これらの諸検討結果をback upするため、通常型20例(転移、非転移例各10例)についてin situ hybridization法による検討を施行した。この結果、転移例において原発巣の5例および転移リンパ節7例の腫瘍細胞核にCOX-2mRNA発現が確認されたが、非転移例原発巣における核内COX-2 mRNA発現は2例にとどまった。COX-2は核内で産生され核膜周囲に分布することから核内分布は早期発現と考えられる。従って、腫瘍転移に際してCOX-2が早期に誘導されることは、COX-2が転移関連遺伝子および口腔癌における予後因子としての性格を有するものと考えられる。本検索については、症例数を増やして検討を進めたい。一方、COX-2蛋白発現がp53-Rb pathwayおよび細胞周期制御遺伝子群の動向に及ぼす影響については、COX-2蛋白高発現例を主体にcell cycleのcheck pointにおけるp53-Rb pathway関連蛋白およびcyclin-CDK complexの発現状況を主体に、現在、検索を進めている。
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