2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15592308
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
荻野 雅 千葉大学, 看護学部, 講師 (60257269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 章子 千葉大学, 看護学部, 助手 (90361419)
田中 道子 千葉大学, 看護学部, 助手 (70344976)
岩崎 弥生 千葉大学, 看護学部, 教授 (60232667)
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Keywords | 精神科看護 / 看護倫理 / 教育プログラム |
Research Abstract |
本研究は、精神科看護の質の向上を目指し、多くの倫理的問題を抱える精神医療の現場で患者に一番身近に接する看護師の倫理観や人権意識を明らかにすることにより、現在の精神医療での倫理的実態を明らかにし、現実的、効果的な精神科看護倫理教育を開発することが目的である。本年度は精神病院に勤務している看護師の倫理観を明らかにするため、聞き取り調査を行った。 本年度の前半は文献検索を行い本研究の概念枠組みを作成した。概念枠組みとして、精神科医療現場での倫理的判断には、倫理原則にのっとった意思決定プロセスと並行してケアリング倫理に基づく意思決定が行われるものと仮定した。また制度や資源の現状に即して行われる意思決定もそのプロセスに加えて作成し、そこから聞き取り調査でインタビューする内容を洗練していった。 今年度後半にはその結果に基づいて精神科看護師を対象とした聞き取り調査を行った。聞き取り調査の対象となった施設は、精神看護学を専門としている看護系大学の教員から倫理的看護実践を行っていると推薦を受けた施設であり、関東近辺の10施設に研究協力をお願いした。その中で本研究の趣旨に同意し協力した施設は7施設、そしてその施設で3年以上の実践経験があり、研究協力に同意した対象者は23名であった。研究対象者の平均年齢は35.4歳、女性16名、男性7名、精神科看護経験は平均10年であった。明らかになった倫理的ジレンマは大きくは3つあり、ひとつは医療者が患者の利益を考え患者の意思に反してまでも施す強制的治療と、患者の治療を受けたくないという意思を尊重したいという対立(慈善対自律)、次に家族の利益と患者の利益の対立(利益対利益)、そして患者の意思を尊重したいがマンパワーや時間的な制限により患者の意思さえも聞けないという現状(公平対自律)であった。その中で看護師が倫理的判断の根拠としているのは患者自身の意思であったが、一方で患者の意思を確認する手段に対して関心が低く、患者のためという思いや自分が患者だったらという推測の下で判断を行っているという現状が浮かび上がってきた。また患者がその意思をはっきりと明言しないことに対し苛立ちを感じ、患者の意思をチームに伝えるという役割を担っているとの自負を感じているということが明らかになった。 今後、さらに分析をすすめ、その結果を元に質問紙を開発し全国調査を行う予定である。
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