Research Abstract |
本申請課題は,水文学において最も評価が困難な蒸発散量と不飽和浸透速度のうち,後者についてその空間分布を測定し,あわせてそれによる溶質移動を評価しようというものである.その際,対象を根圏部に限定し,根などによる選択流の影響も考慮した検討を試みた2年計画の初年度の平成15年度は,根圏部での水移動の把握のために,以下を行った. 1)樹木の周辺部分での地上到達水量の分布と樹冠の影響の把握 2)樹木の周辺部分での表層土壌水分量の分布と変動の解析,及び浸透水量分布の検討 2年目にあたる平成16年度は,2)について前年度のデータにさらに実流域でのデータを追加して整理し,モデル化を試みた.また,水質については実流域でのSiO_2の移動に着目した. モデル化については,樹木の周辺でTDR土壌水分計を用いて降雨期間中およびその直後を通じて継続的に観測した表層土壌水分量の変化率から不飽和浸透量が推定できるかを検討した.その結果,1)表層土壌体積含水率の場所による差は大きいが,全体的には幹に近い方が体積含水率の平均値が大きく標準偏差は小さく,選択流を生じうること,2)体積含水率が比較的小さいときは,不飽和浸透フラックスは,水頭勾配=1としたモデルで表現できること,3)体積含水率が比較的大きいときは2)のモデルが適用できず,マトリックス部より大きな空隙による浸透が考えられることを示した. また,実流域での浸透については,森林斜面での土壌水分量の分布を検討した.その結果,比較的樹木に近いほど降雨後の表層土壌の水分減少が少ないこと,斜面下部のほうが上部よりも水分減少が少ないこと,くぼ地の斜面では斜面方向の流れが起こりやすく,平坦な斜面では不飽和鉛直浸透が主であることを明らかにした. 溶質移動については,土壌表層では深層に比べSiO_2濃度が低いこと,先行降雨・降雨特性により河川流出水のSiO_2濃度は異なること,この2つのことから,SiO_2濃度によってどの程度まで浸透した水が流出したかを推定できる可能性,選択流の影響を評価できる可能性があることを示した.
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