Research Abstract |
1.観測の概要 大洲市にある約10.7haの山林地流域のほぼ中央地点,北西斜面に設営された微気象観測タワーで,以下の観測を実施した. (1)乱流変動法によるフラックス観測:タワーの高度35m地点に,3次元超音波風速計(CSAT3,Campbell),水蒸気濃度・二酸化炭素濃度変動計(OP2,DDG)を設置し,乱流変動(渦相関)法による顕熱・潜熱・CO_2フラックスの測定を行った.10月にOP2の納入,乱流変動法によるフラックス計測のための制御プログラムの作成,設置用金属アームの設計と発注,および愛媛大学農学部内の蔬菜畑におけるテストランを経て,当観測機器は12月3日に設置された.観測日は,12月25日までの晴天日14日間である. (2)個葉蒸散・光合成観測:携帯型蒸散・光合成測定システム(LI-6400,Li-Cor)を用い,観測タワーに近いスギの個葉蒸散・光合成速度を測定した.測定日時は10月24日,11月7日,12月4日の12:30〜15:00である.測定葉の高度は,地面上約21mである. (3)水平風速鉛直分布観測:熱線風速計(ISA-80A, SHIBATA)を2台用い,1台を高度35mに固定,もう1台を15〜20分ごとに鉛直方向に移動することにより,群落内部と上部の風速鉛直分布を測定した.測定日時は11月7日である. (4)地表面(群落面)温度の2次元分布観測:2次元赤外線放射温度計を用い,タワー上から流域北東の尾根部の放射温度を観測した.観測日は12月4日である. (5)流域水収支観測:流域末端の集水地点設置で流量を,その近傍の開けた地点で降水量を測定した. 2.観測と解析の概要 乱流変動法によるフラックス観測結果から,期間中における日中約10時間の蒸発散量は0.2〜0.4mm,同じく純光合成速度は3.5〜6.3(gm^<-2>)であった.個葉の蒸散・光合成速度は,これよりもやや高い値であったが,測定個葉に人工光を照射したことと群落全体としては観測期間中ほとんど直達日射が入射しなかったことを考慮すると,両者は量的に同等の観測結果であると考えられる.また,フラックス観測結果から群落抵抗値を算出し,気象要素との関係を検討した結果,日射量との間に双曲線的な関係が確認できた.これを群落抵抗サブモデルとし,2次元放射温度分布を入力値として,観測対象の流域尾根部の日射量分布と蒸発散量分布を推定した.
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