2004 Fiscal Year Annual Research Report
筋芽細胞分化に伴うアポトーシスにおけるDNaseγの役割
Project/Area Number |
15603006
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Research Institution | TOKYO UNIVERSITY OF SCIENCE |
Principal Investigator |
塩川 大介 東京理科大学, 薬学部, 助手 (90277278)
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Keywords | アポトーシス / 細胞分化 / 遺伝子発現 / エンドヌクレアーゼ / 神経 |
Research Abstract |
興味深いことに筋芽細胞アポトーシスのDNA断片化は分化過程にある細胞では顕著に観察されるが、未分化細胞に於いては全く検出されないことが報告されている。我々はこの現象に着目し研究を行い、筋芽細胞分化に伴いDNaseγ遺伝子発現が誘導されること、さらにこのDNaseγが分化依存的DNA断片化を触媒することを明らかとした。以上の研究成果を踏まえ、我々は分化過程にある細胞ではDNaseγ依存的な通常とは異なるアポトーシス経路が存在するのではないかという着想に至った。本年度の研究に於いては、筋芽細胞分化系において明らかとなったDNaseγを介するアポトーシス経路の普遍性について明らかとするため、特に神経細胞分化に伴うのアポトーシスに焦点を絞り実験を行った。 神経細胞分化に伴うアポトーシスDNaseの発現変化をマウス神経芽細胞N1E-115を用いて検討した。細胞周期を進行する未分化細胞ではCAD発現が認められるが、静止期にある分化細胞ではCADは消失しDNaseγが発現誘導されることを見いだした。分化状態の異なる神経細胞アポトーシスに於けるCAD,DNaseγの役割を明らかとするため、それぞれの活性化をCaspase-3切断部位に変異を導入したICAD変異体、及びDNaseγアンチセンスRNA発現ベクターを用いて抑制し、アポトーシスに伴うDNA断片化に及ぼす影響を解析したところ、未分化細胞の薬剤誘導アポトーシスに於いてはCADが、分化過程に於ける自発的アポトーシスに於いてはDNaseγがそれぞれDNA断片化を触媒することが明らかとなった。さらにPC12細胞を用い同様の実験を行い、神経分化細胞のNGF除去によるアポトーシスに於いてもDNaseγがDNA断片化に必須あることを示した。 本研究に於いて、我々が筋芽細胞分化において見いだしたDNaseγを介するアポトーシス経路が神経細胞分化過程においても重要な役割を果たすことがが明らかとなった。また、DNaseγ遺伝子の発現は、組織、細胞、分化状態、癌化により大きく変化することが知られている。すなわち本研究において得られた知見はDNaseγの生理的役割を理解することのみならず、細胞の分化、癌化のメカニズムの解明、さらには新たな視点からの制癌剤の開発につながることが期待される。
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Research Products
(6 results)