2003 Fiscal Year Annual Research Report
始原的光学性を活用した体験型高精細多方位カメラの開発と相関芸術表現的運用
Project/Area Number |
15604005
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
佐藤 時啓 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (20187214)
|
Keywords | 表象芸術 / カメラオブスクラ / 相関的表現 / 光の表現 |
Research Abstract |
平成15年度は主として二ヶ所で異なるタイプのカメラを制作し、パブリックに公開することによってカメラ内部の映像体験を通じた相関的装置とすることを試みた。リアルタイムに光の結像によって映る風景と、その支持体である空間との関係を考察出来る場を制作し、鑑賞体験できるようにした。 一つは、広島市旧日本銀行の一室を使った試みである。市電と車の行き交う表通りに面した一室を暗黒の空間として、焦点距離2500mmのレンズを二つ壁面に穿った穴にとりつけ、空間に浮かばせた全長3500mm直径2500mmの飛行船型の風船にそれぞれの方向から少しずれた雑踏のイメージが投影されるように設置した。『表象都市広島』という展覧会の一作品として制作したが、被爆建物の一室の暗闇に浮かんだ白い風船に、窓から差し込む光線として日常の雑多な風景が投影される。カメラの構造を用いて、体験者が歴史と現在を思考できる空間とした。 もう一つは、パブリックな空間における体験装置として本格的な構造物であるドーム型多方位カメラの研究開発を行った。構造は耐候鉄板のフラードーム形式で、中心には主殻として直径3500mmの球体。それを半分地下に埋め、100mm程の間隔を空けて直径3800mmのハーフドームの外殻を被せる二重構造にして、主殻と外殻との間を通気するようにした。ドーム制作における材料と内部空間の快適性を適える為に、外殻の表面に苔を植えて断熱を図った。対流と通気、断熱を工夫し、真夏でもドームに入れるようにした。上部四ヶ所につけた焦点距離3500mmのレンズが四方の風景を眼球と同じ構造のドーム内に映し出す。外部のカメラのかたちと、内部の映像空間の関係を通じて、多くの他者を新たな空間認識に誘う装置である。 このカメラは、公園に置かれることにより外部の形態が作品として捉えられる。しかし、実際の作品としての要素はその内部で、外側の景色が全体に映し出されていることを認識してからとなる。外部の形態から作品を想像し、内部に入り外部を見る。内部と外部はカメラの構造をもって関係をもち、見る事と見られる事の連続した関係をもった装置となり、これを成果の一つの要素とした。
|