2004 Fiscal Year Annual Research Report
始原的光学性を活用した体験型高精細多方位カメラの開発と相関芸術表現的運用
Project/Area Number |
15604005
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Research Institution | Tokyo National University of fineArts and Music |
Principal Investigator |
佐藤 時啓 東京芸術大学, 美術学部, 助教授 (20187214)
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Keywords | 表象芸術 / カメラオブスクラ / 光の表現 / 写真芸術 |
Research Abstract |
平成16年度研究においては大きくわけて3つのプロジェクトを行った。一つは、長崎県島原半島南有馬町現代美術展における試みで、漁業組合の廃虚となった漁船修理小屋を改装して、屋根と壁に直径100mmのレンズを取り付け、船型の透過スクリーンを天井部に、また船型のテーブルを床面に設置し、それぞれに雲仙普賢岳と有明海を映し出すカメラオブスクラとした。住民はこの小屋にて象徴的な二つの風景を眼にして新たな発見を体験する。 二つめは、サイトシーイングバスカメラ。高精細体験カメラとして、移動する路線バスの躯体をカメラとして使用し、実験並びに実践を行った。カメラオブスクラは歴史的に見て、移動手段と組み合わされた例は知らず、したがって移動する映像を体験したことも極めてまれな体験だったといえる。バスの運転席より後ろを暗幕でしきり、全ての窓を遮光する。そして、通路の部分に高さ170センチ、幅7メーター程の透過スクリーンを設置する。直径50ミリ焦点距離1200ミリのレンズをスクリーンを挟んで左側に2個、右側に3個とりつけ、それぞれがスクリーンに均等に投影されるように窓に取り付ける。そして乗客は、イスに座って映像を体験する。半透明であることによって、スクリーンの反対側の窓から投影される映像は上下は転倒しているものの、左右は逆転していない。しかし、自分側の窓から投影される映像は上下左右ともに転倒しているため、それらの映像が時に重なり、時に逆に動き、5つのバースペクティブが複雑に交差する映像は、知覚を幻惑させ筆舌に尽くしがたい。平成16年10月秋田県大潟村で、初実施。平成16年12月取手にて実施。平成17年3月12日東京銀座にて実施。 もう一点は、360度撮影用ピンホールカメラの製作。ピンホールはパンフォーカスであるために、手前から奥まで焦点調節の必要がない。その効果を使い、水平垂直方向に45度づつずらして、水平方向に8個、垂直方向に3個、合計24個のピンホールカメラを球体状に接合した4×5フィルムを使用するカメラを制作し、撮影した。平面上に展開する展示と、8角柱を制作し鑑賞者がその内部に入って鑑賞できる、インスタレーション展示も行った。東京銀座ギャラリーGAN(平成17年1月)山口芸術情報センター(平成17年2〜3月)。 今年度も、昨年度に引き続き始原的光学性を応用した、他者との関係を目論み新たな視覚と知覚体験をもたらす装置を、色々な場所で制作実践し、多大な成果があった。
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