2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15604015
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
田中 徳一 日本大学, 国際関係学部, 教授 (20120503)
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Keywords | 筒井徳二郎 / 海外巡業 / 大衆演劇 / 前衛演劇 / 演劇改革 / 宝塚歌劇 / 歌舞伎レビュー / 新国民劇 |
Research Abstract |
昨年度同様、筒井徳二郎の国内活動と海外巡業(昭和5〜6年)について、これまでの調査を継続実施しながら、特に西洋の指導的な前衛演劇人が筒井の海外公演から、演劇改革のためにどのような刺激を受け取ったのかを考察すると共に、筒井の海外巡業と当時の宝塚歌劇における新国民劇創成の試みとの関連について、資料収集に努めた。その結果、筒井の海外巡業を介し、日欧の演劇改革の方向としてパラレルな関係が明らかになってきた。 (1)国内における調査研究 平成15年度の学会発表と、その後の調査研究を踏まえて、次頁の通り『演劇学論集・日本演劇学会紀要42』に「筒井徳二郎の海外公演と西洋演劇人の反応-コポー、デュラン、ピスカートア、ブレヒト、メイエルホリドの場合」という論文を書き、筒井が大衆演劇の旅回り役者ながら、剣劇・歌舞伎の海外公演によって時代の要請に応え、筋の単純化と身体言語による黙劇化、見せ場をレビュー式につないで作品を圧縮するなどの独特の上演方法が、西洋の指導的な前衛演劇人に演劇改革のための刺激を与え得たことを資料的に証明した。他方、昨年度同様、阪急学園・池田文庫において、筒井の海外公演の方法と軌を一にする、当時の宝塚歌劇における新国民劇創成に関する資料を収集すると共に、特に日本人の好む演劇は古来すべてレビュー形式で、新しい時代の内容を歌舞音曲の芸術表象によって歌舞伎レビューに仕立てるべきであるとする、坪内士行の一連の新国民劇論と、その舞台化の試み『忠臣蔵』『狐忠信』『二人傀儡師』などを分析研究した。 (2)海外における調査研究 ベルリンのブレヒト資料館で筒井一座公演当時のブレヒト関係の資料を入手した後、ベルリンの国立図書館、ポーランドのグダンスク科学アカデミー図書館、ワルシャワ国立図書館、ワルシャワ国立歌劇場資料館、クラクフ・ヤギロエ大学図書館などにおいて、ケーニヒスベルク、ワルシャワ、ダンツィヒ、ポズナン、クラクフ、リヴィウでの各公演の新聞記事、ポスターなどを収集した。今年度の海外調査で、過去に調査済みのものを合わせると、筒井一座海外巡業22ヵ国70余ヵ所のうち、合計21ヵ国56ヵ所の公演資料が入手できたことになる。これらの資料は20言語に及ぶもので、翻訳して全貌を明らかにするまでに、なお時間を要する。筒井以降で一度にこれだけの規模で海外公演を行ったことは、平成の今日に至るまで例がなく、西洋演劇界に残した彼の足跡は、演劇交流史に正しく記録されるべきであろう。
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Research Products
(1 results)