2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15607003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 伸泰 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教授 (70211745)
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Keywords | 非平衡緩和法 / 相図 / 相転移 / アルダー転移 / 拡散 / 非平衡反応系 / NERANALYZER / 金子・四方模型 |
Research Abstract |
統計物理学・物性理論の主要な目標の1つは、原子・分子から出発して物質の相や相転移・臨界現象を理論的に記述し、予測する事である。この目標に向けて前世紀の初頭以来研究が続けられ、多くの成果が得られているが、多様な物性を自在に記述するには至っていない。一方、1980年代以降の計算科学の台頭に伴い、この分野でも計算機シミュレーションが強力な研究手段と認識されるようになり今日に至っている。数値的手法で最も重要なことは、同じ量を評価するために計算量が最も少ない方法はなにか、ということである。1950年代に計算機シミュレーションによる物性研究が始まって以来、より効率的な解析方法を求めて多くの手法が提案されてきた。そのほとんどは、まず時間平均として熱平衡状態を実現しその上でうまい統計量を評価し解析するという戦略に沿っての提案である。1990年代に入りこれとは正反対の戦略が本研究代表者らにより提案された。「非平衡緩和法」と名付けられたこの方法は、平衡戦略とは正反対に非平衡状態から熱平衡状態への近付き方(非平衡緩和過程)から相や相転移・臨界現象を解析するものである。本研究の目標は、この非平衡緩和法とその応用をさらに発展させ、合わせて広く使いやすいものにすることである。 昨年度までの研究でスピン系の相と相転移についての研究は一段落しており、粒子系について課題がのこっていた。これを受けて今年度は粒子系の非平衡過程を効果的にシミュレートする手法(棄却なしモンテカルロアルゴリズム)を開発し、また固相中での構造と非平衡挙動(拡散)との関係とを解析した結果を公表した。棄却なしモンテカルロ法は剛体球系の高密度でのシミュレーションを、従来のモンテカルロ法や粒子動力学法に比べて、格段に(密度にもよるが数倍から数百倍以上)高速化する方法である。また非平衡緩和の初期過程が粒子の位置秩序により記述できることが明らかとなった。これにより非平衡緩和法により粒子系の熱平衡状態を解析する上での指針が得られた。また金子・四方模型として知られる化学反応系を使い、非線形非平衡挙動の統計力学的な研究に途をつけた。 さらに非平衡緩和法を解析の核とした物性自動解析ソフトウエアNERANALYZERの開発に着手し、暫定仕様に基づいたプログラムを開発し、汎用ソフトウェアに向けての課題を検討した。
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Research Products
(3 results)