2003 Fiscal Year Annual Research Report
密度汎関数法を基礎にした新しい方法論の開発と非平衡電子過程への応用
Project/Area Number |
15607018
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
渡辺 一之 東京理科大学, 理学部第一部, 教授 (50221685)
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Keywords | 空間分割密度汎関数法 / 時間依存密度汎関数法 / 電界電子放射 / 静電容量 / 非平衡電子過程 / 炭素ナノ構造 |
Research Abstract |
平成15年度は、研究計画に従って以下の2つのテーマの研究を実施し成果を上げることができたので、その概要を説明する。 (1)「空間分割密度汎関数法(PRDF)による炭素系ナノ構造の静電容量と電子状態との相関」 我々が独自に開発したPRDF法を用いて、(i)有機分子、フラーレン、カーボンナノチューブ、ジェリウム球、それぞれからなる対向電極の静電容量の計算を行い、(ii)炭素1次元鎖C_n、炭素クラスター内包C_<60>、ジェリウム球の自己容量(孤立電極の静電容量)と電子状態との相関を明らかにした。対向電極の場合、電極の大きさと電極間距離がともに〜1nmのとき静電容量の値は、原子構造に多少依存はするが〜10^<-20>Fのオーダーであることがわかった。また、実験で測定されたシクロペンテン分子の静電容量の値を今回の計算はほぼ再現した。さらに、カーボンナノチューブの静電容量の計算値は、クーロンブロッヶードの実験から予測される値と整合した。炭素1次元鎖C_nの自己容量の計算結果は、炭素原子数nの偶奇の違いで大きく変化することを示した。これは、ナノ構造に特有な離散的電子準位に起因するまさに量子効果であることがわかった。 (2)「時間依存密度汎関数法(TDDFT)によるダイヤモンド表面からの電界電子放射機構」 すでにプログラム開発した実時間TDDFTを用いて、(i)清浄、(ii)水素終端、(iii)表面水素複合欠陥を有するそれぞれのダイヤモンド表面からの電界放射電流を計算し、実験との比較検討を行った。表面終端水素原子はイオン化エネルギーを下げることで、また水素複合欠陥はバンドギャップ中に不純物準位をつくることによって、放射電流を著しく増加させることがわかった。本計算によって、実験結果の理論的裏付けがなされたとと同時に、ダイヤモンド表面からの電界電子放射機構が電子状態から明らかになった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] N.Nakaoka, K.Watanabe: "Quantum capacitances of molecules, fullerenes, and carbon annotubes by the partitioned real-space density functional method"The European Physical Journal D. 24・1-3. 397-400 (2003)
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[Publications] M.Araidai, K.Watanabe: "Field emission of diamond surfaces by time-dependent density-functional calculations"Japanese Journal of Applied Physics. 42・6B Pt.2. L666-L668 (2003)
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[Publications] M.Araidai, A.Yamauchi, K.Watanabe: "Electronic states origin of field emission of silicon clusters"Japanese Journal of Applied Physics. 42・10 Pt.1. 6502-6503 (2003)
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[Publications] 渡邉聡, 合田義弘, 渡辺一之, 多田和広, 洗平昌晃: "電界放射の第一原理計算"固体物理. 38・8. 537-543 (2003)
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[Publications] 渡邉聡, 渡辺一之: "ナノ物性計測シミュレータの開発に向けて"化学工業. 54・4. 278-283 (2003)
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[Publications] K.Watanabe, M.Araidai, K.Tada: "Field emission and electronic structures of carbon allotropes"Thin Solid Films. (in press). (2004)