2003 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類胚性幹細胞の多分化能維持に関わるシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
15609003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
末盛 博文 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (90261198)
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Keywords | 胚性幹細胞 / 多能性 / 霊長類 |
Research Abstract |
本研究はヒトを含めた霊長類ES細胞の多能性維持機構を解明することにある。ES細胞の多能性維持機構についてはマウスES細胞での解析が進んでいる。マウスES細胞はLIF(白血病阻止因子)存在下で未分化状態を維持できるが、霊長類ES細胞の未分化状態の維持には支持細胞(フィーダー細胞)が必須であり、LIFはマウスES細胞で見られるような効果を持たない。LIFはその受容体に結合することで転写制御因子であるSTAT3を活性化するシグナル伝達系が重要であることがマウスで示されている。霊長類ES細胞でLIFが機能しない原因として、霊長類ではSTAT3の発現量が低い、シグナル伝達系のどこかでブロックされている、などが考えられていた。そこでまずカニクイザルES細胞でSTAT3がどのような挙動を示すのかを解析した。その結果STAT3タンパク質自体はマウスES細胞と同等といえる量が発現されていることが確認された。次にLIFによるSTAT3の活性化を調べた。STAT3はLIF受容体を介して特定のアミノ酸がリン酸化されることにより活性化される。そこでLIFによる刺激の有無によりSTAT3の活性化状態がどのように変化するかリン酸化型、非リン酸化型それぞれを特異的に認識する抗体を用いたウェスタンブロット法により解析した。予想に反し、LIF刺激によりSTAT3はその転写活性化を発揮するに十分な活性化を受けていることが明らかになった。さらに活性化に伴っての核内への集積も認められたため実際に標的遺伝子の転写を促進しているものと考えられる。現在、標的遺伝子についてマウスES細胞との差異や機能面での違いを解析している。これにより霊長類ES細胞でLIF/STAT3シグナル伝達機構が未分化状態の維持にどのように寄与しているのかを明らかにできると考えられる。
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