2004 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類胚性幹細胞の多分化能維持に関わるシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
15609003
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
末盛 博文 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (90261198)
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Keywords | 胚性幹細胞 / ES細胞 / ヒトES細胞 / 未分化性 / LIF / STAT3 / 霊長類 |
Research Abstract |
本研究はヒトを含めた霊長類ES細胞の多能性維持機構を解明することを目的としている。昨年度までにマウスES細胞も未分化状態維持に重要な機能を持つLIFがカニクイザルES細胞はその効果が見られないにもかかわらず、STAT3をリン酸化することにより活性化し、同時に活性化に伴っての核内への移行が起きることを確認した。16年度研究計画の目的は、このシグナル伝達機構がどのように働いているのかを解析することであった。カニクイザルES細胞でもマウスES細胞と同様のシグナルが核内に伝達されていることから、他の遺伝子の転写制御がどのように行われているのかを調べたところマウスES細胞と同様の遺伝子発現を活性化していることが分かった。このためSTAT3のドミナントネガティブ型タンパク質を強制発現させることによりLIFからのシグナル伝達を阻害することを試みた。この操作により予想通りLIF添加による遺伝子の活性化は阻害されたにも関わらずサルES細胞は未分化状態を維持していた。この結果はカニクイザルES細胞の未分化状態の維持にLIFが効果を示さないことが、LIFからのシグナル伝達経路が阻害されていたり抑制的フィードバック機構が強いなどの理由ではなく、サルES細胞ではSTAT3の活性化による遺伝子発現制御機構がES細胞の未分化状態維持には必須ではないことを示唆するものと考えられた。この研究成果は幹細胞研究の専門誌であるStem Cellsに投稿・掲載された。ヒトES細胞でもLIF/STA3シグナル伝達経路はカニクイザルES細胞と同様に機能していると考えヒトES細胞でも同様の解析を行った。このほか霊長類ES細胞の未分化状態の維持に寄与する因子の探索を行い一定の成果を上げた。これらの成果は再生医療におけるヒトES細胞の利用に貢献するものと期待される。
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Research Products
(2 results)