2004 Fiscal Year Annual Research Report
シンクロトロン放射を用いた放射線DNA損傷の分光学的研究
Project/Area Number |
15651023
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
横谷 明徳 特殊法人日本原子力研究所, 先端基礎研究センター, 主任研究員 (10354987)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤松 憲 特殊法人日本原子力研究所, 保健物理部, 研究員 (70360401)
藤井 健太郎 特殊法人日本原子力研究所, 保健物理部, 研究員 (00360404)
渡辺 立子 特殊法人日本原子力研究所, 保健物理部, 研究員 (10360439)
|
Keywords | 放射光 / EPR / グアニン / DNA損傷 / ラジカル / 脱離イオン / モンテカルロシミュレーション / DNA修復酵素 |
Research Abstract |
放射線によるDNA損傷の生成過程を、反応中間体であるラジカルやイオンに注目し、大型放射光施設(SPring-8)のシンクロトロン軟X線ビームラインに設置した電子常磁性共鳴(EPR)装置及び四重極質量分析装置(QMS)を用いて調べた。その結果、グアニン塩基に対するEPR測定から、ビーム照射中にのみに観測される短寿命のラジカルと照射後も残存する安定なラジカルは、分子中の酸素1s→σ*励起(約0.5keV)に対して異なるエネルギー依存性を示し、これらの生成が競争過程にあることが示唆された。また軟X線照射されたチミン塩基をアニール処理することにより、安定:なラジカルでも緩和時間が異なる、チミンアリリックラジカルと5一チミルラジカルの二種類が生成することが明らかになった。一方、軟X線(0.5keV)と同程度のエネルギー(0.6keV)の電子線をDNAIに照射してQMS測定により脱離イオンを比較したところ、どちらの場合も糖(デオキシリボース)部位が激しく分解した結果生じるイオンが多数観測された。この結果から放射線の直接効果による、鎖切断の主要な原因は、2次電子による糖部位の分解であることが示唆された。さらに、DNA中のリン原子に特異吸収されAuger効果を与えることができる軟:X線(2.lkeV)をプラスミドDNAに照射した後に塩基除去修復酵素(EndoIIIとFpg)を作用させ、酵素で認識される化学的に安定な塩基損傷の生成効率を測定した。その結果、Auger効果は酵素が認識できる塩基損傷を大きく減少させることがわかった。モンテカルロ法によりリンのAuger効果による損傷の収率・空間分布をシミュレーションしたところ、DNA分子上の数nm程度の距離に損傷が多重に生成する結果が得られ、DNA構成原子への放射線エネルギーの付与により修復酵素の活性を阻害するクラスター損傷が生成することが示された。
|
Research Products
(11 results)