2004 Fiscal Year Annual Research Report
緊急に保護を必要とする車軸藻類の単藻培養株化に基づく多様性保全への基礎研究
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15651102
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野崎 久義 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (40250104)
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Keywords | 多様性保全 / 単藻培養株 / 分子系統解析 / 車軸藻類 / 絶滅危惧種 |
Research Abstract |
日本各地から車軸藻類を採集し、シャジクモ(Chara braunii)の,フラスコモ属(Nitella)数種の粗培養株を確立した。車軸藻類の単藻または無菌培養株を確立する為にシャジクモの成熟した卵胞子を集め低温で保存した。これらフラスコモ属の成熟した卵胞子の観察とDNAデータによる正確な種同定は実施中である。すでに絶滅した地域では湖底の泥等を採集し休眠状態と考えられる材料を得て、実験室で培養して絶滅種を再生させるという方法も平行して実施したが、発芽した車軸藻類は得られなかった。 培養株を用いて日本産の車軸藻類代表的で分布域の広いシャジクモの現時点での遺伝的多様性をrbcL遺伝子で推測した結果、日本産の本種は2個の系統からなる事が判明した。野生絶滅種とされていたホシツリモ(Nitellopsis ontusa)の群落が河口湖から発見された。群落は1964年の報告と比較するとかなり縮小していた。また、本種の河口湖産株と野尻湖産株のrbcL遺伝子を解析した結果、ヨーロッパ産の本種と同定されていたものと極めて遺伝的に類似していることが明らかとなり、日本産のホシツリモに関する種同定が初めて分子レベルで支持された。多数遺伝子マーカーによる系統解析と卵胞子の断面構造の比較観察を実施した結果、混乱しているフラスコモ属内のより自然な分類体系の構築への基盤が形成された。 陸上植物MADS-box遺伝子の起源と進化を明らかにするために、MADS-box遺伝子をカタシャジクモ(Chara globularis)、コレオケーテ、ミカヅキモから単離解析した。系統解析の結果、MADS-box遺伝子はシャジクモ藻類から陸上植物が分枝した後で著しく分化した可能性があることがわかった。カタシャジクモの遺伝子は生卵器と造精器で特異的に発現し、とりわけ卵、精子分化時に発現していた。
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