2005 Fiscal Year Annual Research Report
コーパス言語学に基づくイギリスの上院判例における語法の歴史的研究
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15652025
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鳥飼 慎一郎 立教大学, 法学部, 教授 (90180207)
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Keywords | 話法 / 判例 / イギリス上院 / コーパス言語学 / 歴史的変遷 / 伝達動詞 / 伝達名詞 / 伝達形容詞 |
Research Abstract |
本年度は、判例における話法の本質を探るべく、関連諸領域着の研究と、話法が判例において極めてダイナミックに使用されている実態を中心に研究を進めた。 話法が関連する諸領域は、英文法論、語用論、文体論のみならず、narratology、社会言語学、会話分析、談話分析、法と言語、forensic linguisticsなど幅広い分野に関係し、社会的要因、心理的要因、歴史的要因、などが深く関わっている事が判明した。 話法が判決文においてどのように談話内に導入され、それが同一談話内でどのように継承されていくのかについては、伝達動詞allegeおよびその派生形であるalleged, allegation, allegedlyを軸に、3つの歴史的コーパス内におけるダイナミズムを詳細に分析した。その結果、伝達動詞allegeで導入された話題が、伝達名詞allegation、あるいは伝達形容詞allegedによって継承されていく様子が明確になった。その継承形態を、the general contracting pattern of reporting mode useと名づけた。このパターンが一般的な継承形態である。被伝達部が次第に簡略化され、縮小して行き、最後には談話の背景的知識となってゆく形態である。これ以外に、the expanding pattern of reporting mode useと名づけたパターンも存在する。このパターンは、伝達名詞だけが最初に談話内に導入され、その後、詳細な被伝達部が導入される形態である。前者は判例内における原告と被告とのやり取りを時間軸に沿ってダイナミックに提示するときに多く用いられる。一方、後者は、これまでの論争点の要旨や要約を提示するときによく用いられるパターンである。いずれのパターンであれ、伝達部が継承される被伝達部の話題を明示している点に変わりはない。 本研究は、判例文という社会的な談話構造において話法がどのように使用されているのかを研究することを主たる目的としているが、その研究過程において、社会的要素がいかに話法に影響しているのかを強く考えさせる結果となった。
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