2003 Fiscal Year Annual Research Report
多元化する社会における「共生」のための公教育の意義と限界
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15653002
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
阪口 正二郎 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60215621)
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Keywords | リベラリズム / 立憲主義 / 公教育 / 多様性 / 原理主義 / 共生 / 卓越主義 |
Research Abstract |
今年度は、アメリカにおいて原理主義が公教育に対してなしている幾つかの挑戦的な問題提起について、原理主義の問題提起の歴史的、政治的背景を分析し、それに対するアメリカの判例実務や憲法学の応答を考察するとともに、リベラル・デモクラシーにおける「共生」のさまざまなかたちと、それに応じた公教育の意義と限界に関する英米の政治哲学の議論の分析を行うことを研究目的として、研究を行った。 今年度の研究は、主として原理主義の公教育に対する挑戦に対する憲法学、政治哲学の応答の分析にあて、その結果、憲法上の問題としては、問題は公教育の場面における信教の自由と政教分離の対立として立ち現れるものの、その背後には多元的な社会において多様な価値や宗教がどのように「共生」してゆくのかという立憲主義の根幹に関わる政治哲学的な問題が存在しており、いかなる「共生」の形を構想するかによって公教育の役割もまた異なってくること、それに応じて信教の自由と政教分離の対立の調整の仕方も異なりうることを明らかにした。 その上で、今年度は、アメリカにおいて、近代的な生活への同化を拒否して教典の厳格な解釈に基づいて生活し、子ども達にもそのような教義に基づく教育を行おうとしているサトマール派の要求を呑んで、サトマール派だけが生活する地域を一つの学校区と認めたニューヨーク州法が政教分離違反として争われた事件を素材にして、多文化主義の挑戦に対するリベラリズムに基づく「共生」のかたちを応答として示すと同時に、その下での公教育の意義と限界を示す成果を論文に取りまとめた。
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Research Products
(1 results)